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ドン・リゴベルトの手帖

「継母礼讃」の続篇。表紙を飾るのはクリムトの絵だけれど、ストーリーの中で使われるのは、彼を師事した二十代で早世した天才画家エゴン・シーレの方。
ドン・リゴベルトの手帖 (中公文庫)ドン・リゴベルトの手帖 (中公文庫)
(2012/12/20)
マリオ・バルガス=リョサ

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「継母礼讃」で、義理の息子美少年アルフォンソの罠に落ち、少年に誘惑された継母ルクレシアは夫のドン・リゴベルトと別居している。そこへ父と暮らすアルフォンソが突然訪ねてくるところから物語が始まる。過去の悪夢がありながらアルフォンソを拒絶できず、今は美術の勉強をしている彼は傾倒しているエゴン・シーレの絵画一枚一枚、その波乱に富んだ短い人生を継母に語り聞かせる。一方妻に別居されたドン・リゴベルトは、愛する妻を失い、日々妄想と夢の中で妻を描きながら暮らす。

ルクレシアとアルフォンソとの絡みだけが現実社会。これと交互に登場するのはリゴベルトの幻想と官能の妄想世界。妻を狂おしいまでに偏愛する彼の妄想の中のルクレシアの七変化は前作以上のエロスの”変奏曲集”で、まさしく表紙のクリムトか、ギリシャ物語の女神か、というところ。そして更に章の最後に挟まれるのは、リゴベルトからルクレシアへ、ルクレシアからリゴベルトへの手紙と思わせる、でも差出人のない手紙。

やはり凄いのは作品全体の構成力。アルフォンソに熱烈に語らせるエゴン・シーレの人生や作品への考証(それ、即ちリョサの考証)はなかなか興味深いし、シーレだけでない名画の話しや、音楽、ギリシャ神話、文学、哲学、と満腹な盛り込みようで、深くて重層的。お見事です。

エロティシズムは、肉体的な愛を知的、感覚的に人間化する行為であるが、ポルノグラフィーはその低下、堕落である。
ああ、まさしくこれ。彼の作品に込めた意図はよくわかってはいないけれど、大衆的なるポピュリズムや、画一的で没個性な集団主義やらの批判がチラチラのぞきくところはいいなあ。偏愛性(変態ともいう)満載だけれど妻をただただ愛するリゴベルトの可愛さ、女神の化身のようなルクレシアだが夫を思う健気さがいじらしい、というのが俗っぽいながらやっぱり良いのかも知れん。そして実は最後はどうやらハッピーエンドの大団円。満腹ですな。。。
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