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パンタレオン大尉と女たち

バルガス=リョサは古本でもちょっと高めが多くて、この本は元¥1,700がプレミアムが付き、古本カフェでは(The 古本カフェというのが正しい)確か¥3,000くらいになっていた。先月、自分の誕生日に自分にプレゼントと言い訳をして買ってしまった。
パンタレオン大尉と女たち (新潮・現代世界の文学) 
パンタレオン

「フリアとシナリオライター」
に先立ち書かれたこの本は、軍への批判精神を盛り込みながらも、文体は極めてユーモラス。丁度シリアス路線を脱皮して、ユーモアを介することで逆に生み出されるリアリティーに気付いた頃の作品だそう。軍批判を抜きにしてエンタテイメントとして読んでも充分楽しい。設定の面白さ (アマゾンの辺境地で兵士による性犯罪の多さに頭を抱える軍上層部が、従軍慰安婦部隊を組織する)、冒頭にいきなり現れる映画のフラッシュバック手法を取り入れた会話分 (異なる時間・空間・人物の会話と改行だけで混在させる)報告書、書簡、新聞記事などの極めて公式で硬い文章の引用、でも内容は大爆笑、とやっぱりリョサって上手い。

この軍が組織する従軍慰安婦部隊は、そうはいっても極秘事項として進まねばならない。この任務を命じられたのがパンタレオン大尉。あくまで軍の組織だということは極秘なため、上層部はパンタレオン大尉に常に平服で、絶対に軍人であることを悟られることがないようにと厳重に申し伝える。軍に生真面目な程忠誠を近い、任務に誇りを持ち、謹厳実直で家族思い、そしてそのオーガナイズ能力がピカイチなものだから、彼は見事にこの部隊を作り上げ成功させてしまう。必要な女性の人数、奉仕の回数とその効率を上げるための提案、自らの家庭生活を実験台にした徹底したリサーチ、待ち時間に兵士に読ませるエロ本を要求する理由も、効率性重視故・・・ こういった報告・リサーチが彼の上司への報告書に書かれる。この役所的で生真面目な、でもふざけた報告書には大爆笑だけれど、いや待てよ、こういうふざけた報告書って、今でも普通に役所が書いているよね・・・

さて、あまりに上手く運営してしまったものだから、極秘のはずの組織は公然の秘密となってしまう。そして最後に夫人巡査官の一人が死に、その葬儀に軍服で参列し、毅然と哀悼の意を示したことから、展開は悲しいものになっていく。大尉を利用するだけ利用して、軍の関与が悟られると大尉を解雇させようと、要はそんな組織はなかったことにしようと企む上層部。大義名分ばかりご立派で、体裁ばかりを気にし、雲行きが怪しくなると蜥蜴の尻尾きりを行うわけだ。そんな上層部に言い放つパンタレオン大尉、自分は誠心誠意、忠実に任務を遂行し、そして従軍慰安婦組織を円滑に運営し、そこで働く女性たちは軍のために働き、その女性達に敬意を払うため、軍服で哀悼の意を示した・・・ 

パンタレオン大尉の人間性にはホロリとくるし同情もしてしまう。でも、従軍慰安婦部隊という発想と、軍の関与を極秘にするっていう策と、軍に忠誠を誓い、命令だからと忠実にしかも誠心誠意努力して成果を挙げちゃう大尉ってどうよ? 南米某国の軍組織の批判というより、アジアの某国のお粗末な官僚体制を頭に描きながらこの本を読むと、そもそもさ・・・という「そもそも論」に最後は行き着いちゃうんだよね。
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