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顎十郎捕物帳04~鎌いたち

鎌いたちという言葉には、何だかゾクゾクさせられるものがある。科学的に在り得ないと云われても、いやいや・・・此の世には科学では解明できないものがあるんだよ。。。
顎十郎捕物帳 04 鎌いたち顎十郎捕物帳 04 鎌いたち
(2012/10/04)
久生 十蘭

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出だしは魚釣談義。暇を持て余した顎十郎が、釣でもするかなあってなノリなのかと思わせて、これが事件の解決に繋がる。続けざまに五人が深く咽喉を斬られて死ぬという怪事件。顎十郎の叔父、森川庄兵衛はこの江戸市中を竦みあがらせている事件解決の糸口が皆目検討がつかず、苦虫を潰したような顔をして唸っている。傷は極めて異様なもので、左の耳の後から咽喉仏のどぼとけの方へ偃月形みかづきがたに弧を描いて刎はねあげられ、どの死体にも判で捺したように、見事な鎌形の傷があり、でも何ひとつ所持品が失われていない。その傷口はどれも、場所といい、大きさといい、また、鎌なりのその形もいずれも寸分のちがいはない。とまあ、こんな事件なので、これはもう鎌いたちの仕業以外の何ものでもないというのが、市中江戸庶民の意見。と、そんな冴えない叔父上を釣に誘ったのが、顎十郎。

結局今回も顎十郎が事件を解明し、でも手柄は叔父さんに譲り、機嫌の直った叔父さんに「小遣にありついてくべいか」って算段をしているところで、めでたく終了。彼の謎解きには、いつも見事な理論があるんだけれど、これが深い人間洞察ってところがなかなか興味深い。のらりくらりと掴みどころのない風来のくせして、いつも周りをじっと眺めているその眼力の凄さ (でも、それをおくびにも出さない) その鋭い洞察力の一端を担っているのが、こんな彼流読書らしい。

この顎十郎、本郷弓町の乾物屋の二階に寝っころがって、毎日のんきらしく古い捕物控を読みちらしている。所在なさの暇潰しばかりではなく、なにか、相当、量見のあることとも考えられるのだが、世の常の勉強ぶりとちがって、朱筆を入れるわけでもなければ、書きぬきをするわけでもない。畳のうえに腹匍ばいになって、鼻の穴をほじりながら、気がなさそうに走り読みをしては放り出す。馬鹿でなければ、よほど鋭い頭の持主なのかもしれぬ。ともかく、茫漠としてとらえどころがないのである。
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