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Middlesex

このところ、英語本は勝手知ったる楽チンなシリーズものばかりダラダラと読んでいたので、これだけ小さな文字で狭い行間で、600ページあって、しかも2003年のピューリッツァー賞受賞作品というしっかりした(??)作品を読むのは久しぶりだった。
MiddlesexMiddlesex
(2002/04/30)
Jeffrey Eugenides

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主人公、そして語り手はCalliope。女の子として生まれ、当然ながら女の子として育った彼女が、14歳の時に自分は男性、両性具有だと知る。今は男性として生きるCal(←Calliope)の現在の人生を織り交ぜながら、物語は彼女の祖父母の時代、ギリシャに遡る。トルコとの戦争で兄Leftyと妹Desdemonaは命からがら故郷を離れ、アメリカに向かうが、その船中でお互いに愛し合っていることを確認した二人は、たまたま知り合った風を装い結婚してしまう。Desdemonaの従姉妹を頼りデトロイトで暮らし始める二人。子供を持つことに恐怖と罪悪感を抱えるDesdemonaだが、男女二人の子供を産む。Caliopeの父となる息子Miltonは又従姉妹のTessieと結婚。そしてCalliopeが生まれる。兄であり夫であるLeftyを失ってから、ずっとベッドの中で暮らすお祖母ちゃんのDesdemona。アメリカで生まれギリシャの宗教・文化・生活の中で暮らしながらも、アメリカ人として強い父親を通すMilton。両性具有という稀有な運命を背負うCalliopeの人生もさることながら、三代に渡るギリシャ移民がアメリカで生きていくストーリーは壮大な大河ドラマという要素を充分盛り込んでいるものの、むしろある移民家族の(もしかしたら)ありふれた暮らしと、自動車産業の町デトロイトを通したアメリカの戦後の変遷の物語だった。Calliopeの数奇な運命も、決して裕福でも楽でもなかったギリシャ移民の暮らしもすべて飲み込んだアメリカがそこにある、という感じ。

本の出だしは、「私は2度生まれた。一度目は女の子としてデトロイトにしては珍しくスモッグのない晴れた1960年の一月に。そして2度目は1974年の夏、デトロイトの救急治療室で10代の少年として・・・」
がその後、実際にCalliopeの半生が語られるのは4部からなるこの小説の最後の部分に過ぎない。3部まではギリシャとトルコの戦争に巻き込まれた祖父母の世代、デトロイトに着いたばかりのLeftyがフォード自動車の工場で働き、大恐慌時代~禁酒法時代のアメリカでバーを経営するLefty、60年代の人種暴動からベトナム反戦とピッピーの時代、ギリシャ移民の家族として暮らしながらも世代を経て徐々にアメリカなるものが一族の中に根付いていく様。Cal一人の人生だけでなく、Calが今生きている証として家族の一人ひとりの人生が緻密に描かれる。皆がそれぞれに抱える痛みがそこにある。だからCalの抱える特異な性もその中では一つの断片として、沈痛にならずに読んでいくことができる。

アメリカの小説の王道たるアイデンティティーと移民問題という両方を抱えながら、祖父母の世代からのサーガを、そこにはまだいなかった孫であるCalに語らせるというフィクションならではの構造。語り手Calは神のように、すべての人たちの思いを受け取り理解し、同時に語り手とは別のCalをも語る。タイトル「Middlesex」は両性具有のCalの人生なのかと思いきや、実は家族が暮らしたデトロイトの通りの名前。そこに辿り着いた人たちと、そこから出て行った人たちすべてがとにかく魅力的だった。
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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