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The Third Reich

Roberto Bolanoが一般ウケするわけないと決めてかかっていた私だが、白水社が続々と邦訳を出版する予定らしい。「The Savage Detectives」が上下2巻で出版されたかと思ったら、あの超大作「2666」は辞書サイズで1巻にまとめ上げられ、密かな衝撃が起きた(らしい)。そして「売女の人殺し (ボラーニョ・コレクション)」なる本が最近出版された。生前最後の短篇集?は私は読んでいないような・・・ まずい。このボラーニョ・コレクションは全8巻から成るらしい。全8巻?ここまで出せば、もう知る人ぞ知る、レベルではなくなるだろう。で、8巻が何かと調べてみたら、こんなラインアップだった。
『売女の人殺し』 (英語バージョン不明 調べなきゃ。。)
『鼻持ちならないガウチョ』 => 「The Insufferable Gaucho」 (買わなきゃと思っていた本。急いで先程ポチッた)
『通話(改訂版)』 (邦訳ながら私が出会った最初のBolano)
『アメリカ大陸のナチス文学』 => 「Nazi Literature in the Americas 」 (読んだぞ)
『はるかな星』 => 「Distant Star」  (これも読んだぞ)
『第三帝国』 => 「The Third Reich」 (これが今回の本)
『ムシュー・パン』 =>「Monsieur Pain」 (地味だがお気に入り)
『チリ夜想曲』=> 「By Night in Chile」  (読んだぞ、が記憶があまりにない)
** 読んだと威張っていても記憶のどこかに埋もれているものもが多いなあ。そして積み上げたままほったらかしのウチのボラーニョ・コレクションをよいしょ、と持ち上げてみた。
The Third ReichThe Third Reich
(2012/08/30)
Roberto Bolano

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The Third Reichはナチの第三帝国だが、タイトルからして既に恐い。Bolanoの作品がどんなものかと(もし)聞かれたら、Enigmatic and Creepy ときっと答える。その気味悪さが他では味わえない気味悪さで、しかも後を引く恐さ。足を踏み入れたらもう後戻りできないけれど、見えない何かに無理矢理引き込まれる恐さ。

War Gameのチャンピオンドイツ人のUdo Bergerと彼の恋人Ingeborgがバカンスに訪れたスペインの海辺の街は、Udoが子供の頃に両親とともに訪れていた街。そこで出会った同じくドイツ人のカップルCharlyとHannaと、現地の人々とともに休暇を過ごす。Udoは最初から精神的に危うい印象を与える。「The Third Reich」と呼ばれるWar Gameはボードゲームで、Udoはバカンス先でもそのゲームから離れず、太陽を浴びることを嫌い外出もしない。そしてそのゲームに関するエッセイを書き上げたいと願っているUdoは、一人離れてホテルに留まり、純粋にバカンスを楽しみたいIngeborgは彼を残し、CharlyやHanna、現地の人たちとバカンスを愉しむ。Udoは現地で出会ったEl Quemadoと呼ばれるペダルボートの管理人、顔に火傷跡の残る男をゲームの相手先に選び、そしてCharlyがウィンドサーフィン中に行方不明になった頃からすべてのピースが狂い始める。Charlyの片割れHannaは彼の安否を確認せずにドイツに帰国し、Udoの彼女のIngeborgもドイツに帰国する。Charlyの消息が分かるまでスペインに残るということを口実に、Udoはその後もその海辺の町に残り、El QuemadoとWar Gameを繰り返す。素人で言葉も通じないEl Quemadoを相手に最初こそは余裕綽々のUdoだが、一人残ったUdoの精神バランスが少しずつ崩れ、一向にドイツに帰ろうとしない彼は、夜も昼もなく徘徊を繰り返す。徐々にEl Quemadoにゲームの主導権を握られるようになり、その崩壊の様子は、「The Third Reich」の中でUdo側、即ちドイツを中心とする同盟国側の敗退と崩壊の様と重なっていく。

「The Third Reich」はもちろん想像上の戦争ボードゲームだが、それは明らかに第2次世界大戦のヨーロッパを舞台にした戦争ゲームで、実際の参戦国の作戦と歴史をなぞっている。バカンスの風景と、1930年代~40年代の戦争ゲームの場面が交代に現れ、その単なるゲームが、徐々に肥大化し、現実を侵食しながら飲み込んでいくように膨張していく。これといって目立ったイベントもエピソードもなく、明確な結末もなく(相変わらず)、会話は地の文と混在させ、滑らかで美しい文体でもなく、見方によっては稚拙な体裁ながら、気味悪さを確実に増殖させながら進んでいく。ドイツ第三帝国が崩壊する様は現実の戦争と重なるものの、それだけでなく、人間の(永遠なる)邪悪さと残酷さとのインテグレーションがお見事。

そう云えば、先日いつもの古本カフェで「ボラーニョの・・・」という声が聞こえてきた。よしよし、少なくともオタクたちにはBolanoは確実に浸透し始めている。
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