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デ・トゥーシュの騎士

帯の言葉、
プルーストが愛した幻の傑作
につられ(プルーストを読もうとして挫折したクセに・・・)、つい新刊に手をだした。”怪盗” にも弱いが、”騎士” にもちょっと弱い。
デ・トゥーシュの騎士 (ちくま文庫)デ・トゥーシュの騎士 (ちくま文庫)
(2012/06/06)
ジュール・バルベー ドールヴィイ

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そして文庫本の裏を返すとこんな紹介文。
1800年頃のノルマンディ、王党派の騎士デ・トゥーシュは、共和軍の手におちて塔に幽閉される。救出のため、12人の勇敢な戦士たちが死地へと赴いた。その中に、絶世の美女と謳われたエメ・ド・スパンスの婚約者がいたが、壮烈な死を遂げる。北の地での凄絶な戦闘と、年を経て今は聴覚を失った悲劇のヒロイン・エメをめぐる驚くべき秘密を、世紀末デカダンス美学の光芒を放つ華麗な文体で描く。

世界史に疎い私はこのフランス革命後の混乱期がどうだったかなんて全然知らないけれど、騎士デ・トゥーシュの話しは史実に基づいて書かれたらしい。作品はかなり楽しめたが、それよりも衝撃的だったのは、あとがきで紹介してくれた史実の方。この騎士談は「ふくろう党」の戦いだが、「ふくろう党」とは、フランス革命の過程で革命派に反対した王党派のゲリラ戦士集団。共和派に逮捕・投獄された騎士デ・トゥーシュがふくろう党の戦士たちによって奪回されるという1799年に起きた事件に脚色を施したのがこの本。バルベー ドールヴィイが1852年にこの本を書き始めた時、彼はデ・トゥーシュは既に死んでいたと思いこんでいたが、実はノルマンディーの施療院に狂人として幽閉されていて、実際に彼に会いに行ったそう。これが、この本の結末の元に繋がっている。

と、そんなことを解説されたら、そのあまりのドラマチックさに、読了後ひとり盛り上がってしまった。事実は小説より奇なり・・・ 

騎士の物語といえば、波乱万丈の冒険小説かと思いきや、紹介文のとおり「世紀末デカダンス」の要素の方が強い。物語は騎士デ・トゥーシュ奪還事件から20数年たった王政復古の時代のノルマンディーの古い屋敷で幕を開ける。老いた男女が集まり、その中にいた神父が、屋敷に来る途中、亡霊のようなデ・トゥーシュを目撃したと語り、集まった男女の中の一人、元ふくろう党の男勝りの女性騎士が、昔のデ・トゥーシュとふくろう党の戦いを回想して語る、という構成。

騎士デ・トゥーシュは女性よりも美しい男性という設定で、その美しさの描写もふんだんにあるが、その心はむしろ冷酷。19世紀の騎士談は現代からするとかなり血生臭い戦いで、戦士たちの復讐はかなり残酷。極めつけは、騎士デ・トゥーシュが、裏切り物の粉引き老人を、風車に括りつけ回し続けた揚句に、一発で心臓を撃ち抜くシーン。男まさりの醜女ペルシー嬢の奮闘や、バロック的なかなり誇張された騎士たちのキャラクター、北部ノルマンディーという舞台設定、ヒロインともいうべきエメと戦士の中のひとりジャックとの悲恋・・・ まさにデカダンス。

(教科書的な)歴史の中では、王政復古を遂げたもののやはり、どうも革命派が正義のような印象があるが、史実がどうであれ、ブンガク界では滅び行く貴族の退廃がやっぱり面白いなあ。
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