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The Virgin Suicides

「Middlesex」を読んでどうも気になるJeffrey Eugenides。ということで、ソフィア・コッポラによって映画化もされ、こっちの方がどうも有名らしいこの本も読んでみた。
The Virgin SuicidesThe Virgin Suicides
(2009/04/27)
Jeffrey Eugenides

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翻訳されたものは「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」というタイトルがついたらしい。ずばりそのまま、Lisbon家の5人の娘たちが次々に自殺をしていく物語。それだけでも十分理解不能。読了後思ったのは、Jeffrey Eugenidesは何故にこうエキセントリックな登場人物を配して、暗い話しばっかりを書くんだろうってこと。

デトロイト郊外に住むLisbon一家。子供は娘ばかり5人で、美人でエキセントリックな姉妹たちは良くも悪くも町中の注目の的、特に少年達は常に動向を探っている。エキセントリックなのはむしろ、彼女達の両親の方なのだが、あまりにも厳格な方針の元、一切の俗世間から隔離されたようなストイックさを娘達に強いる。当然普通の若者たちの楽しみ(音楽にこっそりタバコにパーティーに、もちろん男女交際)は一切認められていない。ある日末娘のCeciliaが手首を切って自殺をする。一命は取り留めたものの、その後再び自殺を図り命を絶つ。自殺の理由も分からぬまま、事件は腫れ物に触るような扱い。姉妹たちに憧れる近所の少年達が、必死の説得で残った4人の姉妹をパーティーに連れ出すことに成功するが、門限を守らず朝帰りをしたことをきっかけに、両親は娘達を自宅から一歩も外へ出さず、半ば監禁状態に置く。両親たちも全く外の世界と関わらず、明かりもほとんど灯らないLisbon家の屋敷は見る間に荒んでいく。少年達は、夜な夜な向かいの家からLisbon家を双眼鏡で覗き、彼女達の秘密のサインを感じ取り、連れ出そうと屋敷に乗り込んだ矢先、4人の少女達もそれぞれがそれぞれのやり方で自殺を遂げる。

読みながら、窒息しそうな気持ち悪さがずっと続く。少女達の自殺の理由がわからないからではなく、常に見られる側のいる彼女達の言葉も心情も、この本ではほとんど語られない。代わって語るのは、近所の少年の中の一人。”I” という一人称で表される少年はしかし、常に「僕達」である。僕らの青春を懐古する少年たちの目線からみた5人の少女達に、血の通った生々しさを感じ取るのは難しい。というか、これがこの本の狙いなんだろう。外側にいる人間に、過去の断片と僅かに残った遺留品から、少女達の謎の自殺を語らせてもそこからは何もわからない。そして読者もまた少年達と同じく、外側にいるわからない一員になる。だから、少女達が抱えきれないほどの抑圧を感じていただろうことは想像できても、果たして本当にそうなんだろうかと疑問が残る。まるで両親に一切抗おうとせず、はっきりとした理由がないままに命を絶ったのかもしれないとさえ思えてくる。それは外側にいる偽善的な人間、明らかに何かがおかしいと感じていても、関わらず、気付かないふりをした学校や大人たち、興味本位のマスコミ連中の偽善の一部に自分もいるってことなんだろう。

時代は1970年代。きっと最後の古き良きアメリカが終わりを告げ、デトロイト近郊の町は、汚染と公害でみるみる荒廃していく。病んだ木々が次々に切り倒され、近くの湖は汚染され異臭を放つ。それは最後には崩壊したLisbon一家とだぶってくる。他愛もない妄想や憧れが光を放つ、良き時代を回想する青春物語としてはあまりにも強烈だが、Middlesexと共通するのは、そんな諸々を飲み込んで成長(なのか?)していった戦後アメリカの変遷。

このJeffrey Eugenides、あまり立て続けに読まないほうがいい・・・ ちょっと辛くなり過ぎる。
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