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ピサへの道

Isak Dienesenは英語のペンネーム。Isakと言いながら実は女性。母国デンマークの言葉で作品を書く時には、本名、Karen von Blixen名で書く。たぶん有名なのは映画化された「アフリカの日々」と「バベットの晩餐会」だろうけれど、私は「不滅の物語」 (文学の冒険シリーズ) が最初で、実はどんな話しだったか記憶がない。でも面白かったことだけはしっかり憶えている(いい作品だという証拠!)。この「ピサへの道」が文庫化されたと知って、思わず新刊買いをした。原題は「Seven Gothic Tales」。1934年に書かれたこの本の舞台は、北部ヨーロッパ。そこを中心にした19世紀の物語が4篇。残り3篇は発売したてほやほやの「夢見る人びと」に収められ、これにてSeven Talesが完了となる。
ピサへの道 七つのゴシック物語1 (白水Uブックス 海外小説 永遠の本棚)ピサへの道 七つのゴシック物語1 (白水Uブックス 海外小説 永遠の本棚)
(2013/10/10)
イサク ディネセン

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大作・傑作ではないが、珠玉の名作と呼んでしまおう。私の好きな語り部、Isabel Allendeのような冒険談ではないけれど、巧緻さだけ言えばこちらの方が上かも知れない(ノリは全然違うがチェスタトン並!)。千夜一夜物語のように、出自は様々だが何とも不思議な人々が、自らの不思議な運命を披露し、そのそれぞれの物語の中にまた物語が展開するという入れ子の構造。Gothicと言いながら、幻想的ではあってもホラーの要素はほとんどない。勧善懲悪でも、Happy End か Un-happy End かという明確さもないが、典雅な文体とともに、読了後に静かに長く残る余韻がたまらない。勝手に北部ヨーロッパを想像し、澄み切った風景と雪の白さが作り出す不思議な明るさを想像してみた。

18世紀のデンマーク事情は全く分からないけれど、フランスやドイツ、イタリアといった大国(?)の周辺にあるからなのか、教会関係者も登場し、神様論議もあり、その頃の階級社会という枠もあるが、総じて自由な雰囲気。彼女自身も貴族の身分を持ちながら、アフリカに渡り、紆余曲折の果て、祖国に戻り作家になったという人生。そこには既成事実や慣習から開放された自由で強固な精神があったのかも知れない。枢機卿が実は私生児の役者だったり、娼婦だと思ったら美しい処女だったり、美少年が男装の少女だったり、極めつけは、修道院長が、実は猿だったりという、「仮面」の下に隠された別の存在、というどんでん返しにもそれが現れている気がする。閉塞感や古典的な暗さは皆無だ。作中人物が、シェイクスピアにダンテにギリシャ古典文学にと、いちいち文学作品を語るのも嬉しい。作中挟まれていたダンテの神曲の一節など、なんと見事に作品にフィットするのだろうと感心しきり。

今回はベタ誉めする。いや、この人はきっと”ハズレ”作品というものが絶対にないタイプなんだろうなあ。ということで2作目も入手せねば・・・ 
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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