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夜毎に石の橋の下で

「最後の審判の巨匠」をウオーミングアップ代わりに読み、さて本命。レオ・ペルッツ(1882-1957)は、プラハ生まれのユダヤ系作家だが、19~20世紀を生きた作家の割には(?)、そして題材は古典的なのに、現代の作家ではないかと勘違いしそうな位、構成とエンタテイメントっぽさが今っぽい(と私は思っている)。
夜毎に石の橋の下で夜毎に石の橋の下で
(2012/07/25)
レオ・ペルッツ

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歴史に疎い私としては、舞台となった16世紀の魔術都市プラハ、ボヘミア王であり神聖ローマ帝国皇帝でもある、ルドルフ2世の治世という状況がまずわからない。解説によれば、ルドルフ2世は、政治家としては、無能だったらしいが、文化・芸術をこよなく愛し、錬金術やカバラにまで精通していたという。こよなく愛し・・・は裏を返せば、異常な執着心だったともいえそうで、アルチンボルドにこんな自画像を描かせてしまったらしい。
ルドルフ二世予習もなく本を読み始めると、短篇集?と思うくらい、章ごとに違う人物が登場し、それぞれ異なる摩訶不思議な物語を展開させる。1つ終わると次の物語、1つ終わると次・・・それは中世の魔術都市プラハの幻影のようだが、これが最後には一篇の物語にどう収束するんだろう?

登場するのは老若男女、貴賎を問わず、魔術使いや道化師まで含め、ユダヤ人の物語と言ってもいい。ユダヤの大富豪モルデカイ・マイスルなどは実在した人物で、その他(私は知らなかったが)プラハでは有名な伝説も盛り込まれている、虚実入り混じった15の短編。ユダヤの大富豪モルデカイ・マイスルの夫人に恋してしまった狂人皇帝、皇帝と言えども決して道を誤ることはありえない異教徒の妻と、夢の中で結ばれる。そしてモルデカイ・マイスルの哀しき復讐。ユダヤ街の喧騒、俗世間からかけ離れた宮廷の風景、モルダウ川、今はカレル橋と呼ばれる石の橋。。。あ~何故、私はプラハを訪れたことがないんだ、と想像しきれない景色が恨めしい。各章は短編としてもそれぞれ面白いが、最後はバラバラに思われたピースが繋がり、昇華し、美しい幻想物語、いや哀しい愛の物語として完結する。最初のバラバラ感が見事繋がる満足感、達成感のようなものが味わえる。

ハンガリー・オーストリア帝国時代までさかのぼるプラハを舞台にした本は今まで何度がお目にかかったが、それよりもさらに時代が古い。ここは、皇帝が狂王でも、異教徒として疎まれつつも、経済に絶大なる影響力を持ったユダヤ人たちが仕切ることのできる自由がまだ保障されていた良い(?)時代が崩れ落ちる寸前のプラハなのだろうか?(歴史に疎いとこういうところがしんどい)その後、政治的思惑に翻弄され、ハンガリー・オーストリア帝国からドイツ占領から、ソ連傘下の共産国時代とチェコの辛い変遷の歴史があるわけだが、芸術にうつつを抜かし、無能な皇帝が異教徒の妻をひたすら想う物語の方はそんな辛い歴史よりほっとして楽しめる。
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