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文房具56話

また柄にもない本を古本カフェで買ってしまった(本が私を呼んでいた・・・) 串田孫一氏、もちろんお名前は存じているが、和書を読まない私はどこかで遭遇したことがあったろうか?全く思い出せない。1915年生まれは私の祖父母と両親の中間ってところ。流行の昭和レトロといってしまえばそれまでだけれど、私はギリギリでほぼこれら文房具たちがなんだかわかる世代で、あ~~よかった、と読みながら安心するとともに、知らぬ間にどれだけのモノたちを忘れてしまっていたのか気付いた。
文房具56話 (ちくま文庫)文房具56話 (ちくま文庫)
(2001/01)
串田 孫一

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とにかく、文房具56話、すべて列挙してみよう。
帳面 ペン先 消ゴム ぶんまわし インキ 万年筆 糊 白墨 小刀 定規 緑の光 鋏 手帳 束見本 画鋲 輪ゴム 吸取紙 鉛筆 下敷 文鎮 封筒 便箋 貝光 カーボン紙 鳩目パンチ スタンプ台 筆 セロハンテープ ホッチキス アルバム 硯 朱肉 ボールペン 七つ道具 ペーパー・ナイフ テープ・ライター スクラップ・ブック 鉛筆削器 机 書棚 抽斗 クレヨン 謄写版 筆入 色鉛筆 文房具店にない文房具 原稿用紙 日記帳 丸筒 状差 クリップ 名刺整理箱 算盤 虫眼鏡 地球儀 文化を守る力

この「文房具56話」、最初は1976年白日社から「文房具」というタイトルで46話。次が1996年時事通信社から4話加わり「文房具52話」。そして今回の文庫本は2001年筑摩書房からでさらに4話追加され「文房具56話」となった。残念ながら2005年にお亡くなりになっているので、もうこの先追加はない。

会社でだって文房具というものは使うけれど、もうそれは気にも留めないたたの道具になっていたが、姪っ子たちが実家近くの比較的大きな文房具屋さんが好きで、小田原に来るといつも行きたがる。そうだった、私も小学生や中学生の頃は、文房具屋さんは夢の空間だった。

使い捨ては嫌い、物持ちがいい、とは本人の弁。時折雑誌で特集するような今風のどこどこのメーカーの「こだわりの一品」を蘊蓄とともに語っているわけではない。ただただ、昔は誰もが使ったどこの家にもあったような文房具たちの話しである。ノートではなく帳面、チョークではなく白墨、ペンケースではなく筆入れ、コンパスではなくぶんまわし、画鋲や朱肉や状差しだって最近じゃ存在も怪しいものだし、鉛筆削りは大人になったらもう使わない、いや鉛筆というものを小学生は今でも使っているんだろうか?学校では今でもお習字があり、硯にむかって墨をするんだろうか?

文房具だって改良を加え、発達し、昔はなかった素材が使われ、電化製品と一緒で進化し便利になっていく。が、便利になって効率がよくなって、昔は5分かかって小刀で鉛筆を削ったが、今はシャーペンだから削るものがない。その端折ることができるようになった時間のせいで、生活に余裕が生まれたのか?というとこれがかえって余裕がなくなってしまった。洗濯も掃除も炊事も相当に時短できるようになったのに、そんな電化製品に囲まれながら、私たちはかえって忙しい毎日を送るようになってしまった。それは何故なんだろう?不便な世の中で、物も不足していたから、あるものを大事に使い、ないものは自分で工夫して作ったりした時代。串田氏も書いているように、私の母親だってデパートの包装紙はビリビリ破らず、キレイにたたんですべて取っておいた。危険だからとナイフなんて使わない時代になったのかも知れないが、私は兄の小刀でこっそり遊んでいて、ズバッと手を切ったし、家からこっそり盗み出した剃刀をもって、れんげ畑でれんげを草刈して、見事に人差し指まで切った(その傷は今でも指に残っている)。下手くそだけれど、小刀で鉛筆も削ったけれど、それは仕方なく削っていたわけではなく、何だか楽しい作業だった。手を切る程度の刃物くらい使わせて、せいぜい手でも切ってみりゃいい、そうすれば少し子供は賢くなる。”どこかの会社で入社試験を担当したら、鉛筆と小刀を置いて、鉛筆を削らせてみる” と串田氏は云っている。小刀で鉛筆も削れない人間は信用できないらしい。

結局私たちは、そんな楽しみを「便利さ」とともに奪われ、使うべき頭を使わなくなり、バカになっただけなんじゃなかろうか?そしてその見返りの「便利さ」さえも、”平和な時代にあまりに発達し過ぎた機械類は、何か一つ欠けると機能は全くとまる” 程度の便利さでしかない。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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