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脱獄計画

ラテンアメリカ的SFミステリーか? 「モレルの発明」 の後に書かれたこの作品は、「モレルの発明」の一卵性双生児の片割れみたいな作品らしい。
脱獄計画 (ラテンアメリカ文学選集 9)脱獄計画 (ラテンアメリカ文学選集 9)
(1993/09)
アドルフォ ビオイ・カサレス

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家族との確執もあって悪魔島に赴任したヌヴェール中尉が、そこで見たものは何か。南米の赤道直下の流刑地で展開する奇怪な冒険を語る、ボルヘスの年少の師の会心作。

舞台は同じく「島」。フランス領ギアナの群島全体が牢獄となっているその孤立した世界の中に赴任してきたアンリ・ヌヴェール大尉、牢獄の囚人たちと、責任人者である総督。誰も彼もが奇妙で、得体の知れない無気味さが漂う。主人公はアンリ、でも彼の物語を形作っているのは、彼の叔父の日録。はっきりとは明示されないその一族の揉め事の果て、孤島に飛ばされたアンリが、真っ当な正義の人ではなく、彼の日記も手紙も語りもどこか支離滅裂で危うい精神状態は、この物語を無気味にさせる。さらに、登場囚人ひとりひとりが得体の知れない謎の人物たちで、ストーリーの中で延々と姿を現さない島の総督の僕として、従事している。誰を信じたらよいのか、誰が正気で誰が狂気に犯されているのか、いや、皆がすべてが狂気なのか?無気味なのに、何一つわからないまま疑問ばかりが溜まっていくという”悪酔い”のような心境。

SF要素はこの孤島で行われる科学的(なようで、それは非科学的なのかも知れない)実験が結末に用意されていたからだが、それですべての”悪酔い”が醒めたわけでもなく、結局、正気と狂気の境目は何ら解決していない。種明かしされたのに、更なる迷走に追い込まれたようだった。最初からもう一度読み返してみれば、途中に挟まれていた伏線に気付けるんだろうか?いや、やっぱり袋小路だろうなあ。

アドルフォ ビオイ・カサレスは元々はボルヘスの共著で知った作家だったが、「モレルの発明」で衝撃を受け、でも邦訳されている作品が少なすぎるので、作品共々私にとってはいつまで経っても謎の存在。どちらかというと短篇の名手だそうで、最近刊行されながらそういえば、未だに入手していない 「パウリーナの思い出に」 (短篇小説の快楽) は早く買わなきゃな。
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