Entries

パリのレストラン

こちら、「神経内科医の文学診断」で紹介されていた本。ローラン・ベネギ自身が監督もして、映画化もされた。いかにも映画になった時の絵が浮んでくるような、パリの一角、決して御洒落なパリではなく、下町のわが町のレストランの一晩の物語。フランスらしく、洒落と皮肉の程よいミックスかと思いきや、ベタなくらい人情物語。
パリのレストラン (ハヤカワ文庫NV)パリのレストラン (ハヤカワ文庫NV)
(1996/10)
ローラン・ベネギ

商品詳細を見る
原題は、ローラン・ベネギの両親が実際に営んでいたレストランと同名の「Au Petit Marguery」。今宵限りで閉店するこのレストランのオーナー夫妻が、息子とその友だちを招き、お別れ晩餐会を開く。しかし何故閉店するのか、その秘密は全く明かされないまま、物語は登場人物の過去を巡り、思考を描き、老若男女、出自もそれぞれで、そこは移民の国フランスならではの豊富なバリエーションを取り揃え、それぞれの世代の恋と悩みと人生を繰り返し描く。登場人物が多くて、回想シーンが多いので、誰と誰が夫婦で、誰と誰が恋人か途中で混乱してくるので「登場人物一覧」をチラチラ読み返しながら読み進む。

シェフのイポリットは叩き上げの料理人。その厨房で生み出される料理は「おらが町」のレストランとはいえ、立派なフランス料理で、凡人には美味さが想像し切れないというのが難点だな・・・ ベタな物語で、どこまでいっても日常を描く地味な物語りながら、なんだかほのぼのとしてくるのは、これがローラン・ベネギのほぼ自伝とも呼べる物語で、料理人イポリットのモデルは彼のお父さん。料理にも集った人々にも愛情たっぷりなのである。エピソードは必ずにも実際にあった話しばかりではないそうだけれど、夜中の厨房に忍び込んで盗み食いをしたり(フォアグラではなく、ハムだったらしいが)、ローラースケートでガラスに突っ込んだり(自分の家のレストランではなくご近所の店のガラスだったが)、思い出から作り上げられたエピソードには下町の郷愁がたっぷりで、パリとはいえ、なんだが懐かしくなってくる。レストランを継がず、医者を志したローラン・ベネギは結局、患者を治療するテクニックを学ぶことに疑問を感じ、作家に転身してしまい、両親に捧げるこんな小説を書いてしまった。

さてずっと明かされなかった閉店の理由だが、それはイポリットの病気。それも料理人としては致命的な感覚神経細胞種。嗅粘膜に出来た悪性腫瘍で、つまりイポリットがやがて嗅覚を失うことが明かされるのは、物語も終わりに近づいた時。料理人を諦め、それでも癌の治療をして生きることを選択した父母に捧げた物語がこの本。後に映画化した際、彼が料理の監修を依頼したのは引退した父親だった。真冬のパリの寒い一夜、匂いと香りと湯気が充満するレストラン・・・
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/473-78c591d7

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- - - - - 12
3 4 5 6 7 89
10 11 12 13 14 1516
17 18 19 20 21 2223
24 25 26 27 28 2930
31 - - - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア