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新ナポレオン奇譚

「詩人と狂人たち」までのチェスタトンは、まァ容易くはなかったにせよ、それはそれで笑わせてももらったし、楽しませてももらった。これがデビュー長篇作だというが、これがデビュー作かよ・・・と私なぞは思ってしまった。底辺に流れるものに大きな違いはないように思うけれど、デビュー作は気負いがあって固いよね。。。と生意気に口走りそうになったが、この作品が出来上がった発端はチェスタトンの経済的困窮だったとか。
新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)
(2010/07/07)
G・K・チェスタトン

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1984年、ロンドン。人々は民主主義を捨て、籤引きで専制君主を選ぶようになっていた―選ばれた国王は「古き中世都市の誇りを復活」させるべく、市ごとに城壁を築き、衛兵を配備。国王の思いつきに人々は嫌々ながら従う。だが、誇りを胸に故郷の土地買収に武力で抵抗する男が現れ、ロンドンは戦場と化す…幻想的なユーモアの中に人間の本質をえぐり出す傑作。

発表されたものは1904年。80年後の1984年のロンドンを「予言的過去時制」(なんだそりゃ?)で描いたという近未来の”ふり”をした普遍的な世界。今から八十年後、ロンドンは、ほとんど現在とそっくりそのままのロンドンで、相変わらず馬車が走り、ガス灯が照らされ、人々はフロックコートを着ている。すべての国民が平等なのが民主主義なら、別に籤引きで首長を決めたって同じでしょ? (どこかの国の総理大臣選挙みたいだ)ということで籤引きで選ばれた王様、オーベロン・クウィンは古き良き中世都市を復活させ、「自由市憲章」を発表し、選出された市長たちはその冗談に付き合いながら、中世の衣装を纏い、どこにでも自由市憲章”を発表し、町ごとに市長を選出することとし、市長は中世の衣装を纏い、どこにでも鉾槍兵を率いていく。

さて、そんな冗談に真面目に反応したのが、ノッティング・ヒルの市長アダム・ウェイン。彼がノッティング・ヒルを縦断する道路計画に頑なに反対したことから、ロンドン市内で内戦が勃発し、ウェインは少数兵力ながら巧みな戦術で見事勝利してしまう。が、その20年後の2004年、自由の旗印を掲げていたはずのノッティング・ヒルは帝国化し、自分たちの習慣や文化を大事にしようと考えている他の市に対して圧政を敷くようになる。そしてロンドンは再び内戦状態となる。

国王オーベロン・クウィンとノッティング・ヒルの市長アダム・ウェインが最後に語り合う場面では、未来の「逆説の大家」チェスタトン節が聞こえてくる。
「私たちはふたりの人物ではなく、ひとりの人物であるがゆえに狂っているのです。私たちは同じ大脳の二葉であり、その脳がふたつに割けてしまったがゆえに狂っているのです。・・・」
「・・・永久に変わることがない平凡な人間こそ、その対立を変えるでしょう。なぜなら、人間は、平凡な人間は、笑いと尊敬のあいだに真の意味での対立を見ることはないからです。そして彼ら人間、平凡な人間を、あなたや私のような単なる天才は、神のように崇拝するほかはないのです。・・・・」


聞こえてくるのはいいのだが、聞こえてくると混乱する。はて、で、何なんだ?読み終えてみれば、初めてチェスタトンを読む人にはお薦めはしないけれど、他の作品を愉しんだ者からしてみると、チェスタトンってやっぱり最初もチェスタトンだったのね・・・思えてくる。
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