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果てしなき逃走

2012年9月の「ヨーゼフ・ロート小説集4」以来のJoseph Roth。彼の代表作の1つにようやく到達。あ~、そうそうちょっと重くて、暗めで、でも”物語”という意味では、彼の描く物語は実に面白い。
果てしなき逃走 (岩波文庫)果てしなき逃走 (岩波文庫)
(1993/09/16)
ヨーゼフ ロート

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オーストリアの将校トゥンダは第一次大戦のさなかロシア軍に捕えられ,赤軍の兵士として革命を戦うこととなる.十年ののち故郷に帰還したとき,もはやそこに彼の居場所はなかった…….ガリチアに生まれ,ウィーン,ベルリンを経てパリに客死した放浪のユダヤ人ロート(一八九四―一九三九)が故郷喪失者のさすらいを描いた代表作.

ロシア軍の捕虜になり、シベリア送りとなった彼は、ロシア内戦の中脱獄するが、赤軍に捕らえられ、その闘士となる。それは彼の思想とは全く関係なく、同士ナターシャが好きになったから。彼女にブルジョワ思考を矯正されるが、そもそも革命も左翼思想もない彼は、故郷オーストリアに帰る決心をする。それは帝国の将校時代の婚約者であったイレーネに再び会うための帰郷だったが、そこにもう過去の故郷はなかった。つまり、
「フランツ・トゥンダは名もなく、存在意義もなく、位もなく、肩書きもなく、金もなく、職業もなく、故郷を喪失し、法的権利を喪失した、一人の若者にすぎなかった。」
そして、既にブルジョアの男のもとに嫁いでいた婚約者イレーネを追いかけトゥンダはパリに向う。

イレーネを愛しているが故追いかけるのではなく、それは過去の故国オーストリアでのブルジョワ時代に、愛情というより、社会的な地位が保っていた婚約者への/からの愛情は、”過去の亡霊” でしかないのだが、この「果てしなき」逃走は、果てがないのではなく、そもそも行く場所がどこにもない、それは物理的な意味での故郷や愛情ではなく、何もかも失くしてしまった行き場のない彷徨といった方がいい。西欧の象徴であるイレーネの存在も亡霊なら、思想もないままの革命闘士も亡霊。失ったのは、故国でも婚約者でもなく、自分の存在意義。

彷徨うトゥンダの逃走は、結局逃げても逃げても逃げ切れない、振り切れない故郷=捨て切れない過去からの逃走なのか・・・
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