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剃髪式

フラバルコレクションの前回、「厳重に監視された列車」から1年半以上経過しているが、コレクションといいながら、このスローペースな発刊はちょっと不安。あとがきにもあったが、これは三部作になっているらしいので、続きもどうかひとつよろしく・・・ 
剃髪式 (フラバル・コレクション)剃髪式 (フラバル・コレクション)
(2014/04/07)
ボフミル・フラバル

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ボヘミア地方ヌィンブルクのビール醸造所を舞台に、建国間もないチェコスロヴァキアの「新しい」生活を、一読したら忘れられない魅力的な登場人物たちに託していきいきと描き出す。
「ビール醸造所で育った」作家が自身の母親を語り手に設定して書き上げた意欲作。


フラバルは、ビール醸造所の支配人の息子として子供時代を送った。「剃髪式」は彼のお母さんを語りに据えて、フラバル自身が生まれる前、第一次大戦と第二次大戦の狭間のチェコの田舎町を描く。妻(フラバルの母親)マリシュカは、何とも元気で陽気でお茶目な町の人気者、夫フランツィンは規律を重んじる少々堅物な男性で、妻のお転婆ぶりに時折眉をしかめるものの、二人の豊かな愛情は常に暖かい。ここに登場するのが、フランツィンの兄、ぺピンおじさん。ほんの数日滞在のはずが気づいたらずっと居座っている。朝から晩までしゃべる?がなる?このおじさんの語るほら話のような奇想天外なお話しは、抱腹絶倒もの。規律を重んじるフランツィンにとっては、頭の痛い存在ながら、全編このおじさんはムードメーカーの役割を一手に引き受け、お転婆マリシュカとつるむシーンは、なんとも微笑ましい。一緒に煙突に登るシーンはあっぱれマリシュカだ (でも旦那はドキドキ・・・) 舞台はビール醸造所なので、ビール片手に飲み喰いするシーンも登場。ビール好きならきっと本の途中で、一缶開けてしまうに違いない。

新時代の幕開けは、「短縮」というスローガンとなってやってくる。何でもかんでも短いのが、大流行。新しい文明の利器は時間を短縮し、距離を短縮し、とここまではよいが、テーブルの足を切ってしまったり、馬のたてがみをトリミングし、なんとマリシュカは、飼っている子犬のしっぽを短くしようと、それを斧でぶった切るという行動に及ぶ。当然子犬はあまりの痛さに発狂し、苦しむ子犬をフランツィンが最後は銃でとどめを刺すというえぐい結末となる。スカートの丈も短いのがいいと、自分で丈をつめ、膝を押さえながら自転車にのるマリシュカ。そして、フランツィンが大好きな “ビールのような”美しい髪も短くカットしてしまう。

近代に突入した大戦の狭間ののどかな暮らしを描いているようで、のどかになりきれない暗い影が常に横たわっているのは、私の気のせいだけでもなさそうだ。冒頭は延々とランプを描写するマリシュカのモノローグで始まる。このノスタルジックで叙情的なランプの描写が一番好きだった。この郷愁をさそうランプの光は、近代発明たる電気にとって代わろうとしている。いつもどこか表面は喜劇的な体裁でありながら、グロテスクさもふんだんに盛り込むフラバルだが、今回はとにかく全編美しくもの悲しい。新しい時代に不器用に対処していく庶民たちのその不器用さ、愚かさの先に、その後の暗い時代が透けて見えて仕方ない。
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