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夜鳥

出自不明。随分と棚の中で寝ていたと思われる(購入履歴を辿っていったら2年寝ていたことが判明)。で、Maurice Levelとは何者なんだろう?
夜鳥 (創元推理文庫)夜鳥 (創元推理文庫)
(2003/02)
モーリス ルヴェル

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仏蘭西のポオと呼ばれ、ヴィリエ・ド・リラダン、モーパッサンの系譜に列なる作風で仏英の読書人を魅了した、短篇の名手モーリス・ルヴェル。恐怖と残酷、謎や意外性に満ち、ペーソスと人情味を湛えるルヴェルの作品は、日本においても『新青年』という表舞台を得て時の探偵文壇を熱狂させ、揺籃期にあった国内の創作活動に多大な影響を与えたといわれる。本書は、渾身の名訳をもって鳴る春陽堂版『夜鳥』全篇に雑誌掲載の一篇を加え、ルヴェルに関する田中早苗の訳業を集大成する。
 
Maurice Levelは18-19世紀を生きた人だが、翻訳をした田中早苗氏も1884年生まれ。彼がぞっこん惚れ込んで翻訳をしたという「夜鳥」が最初にお目見えしたのは、昭和3年の初夏。常用漢字・現代仮名遣いに改められてはいるが、それでも古式ゆかしい漢字が一杯(振り仮名のおかげで乗り切る)。あとがきに連なる人たちも凄い。翻訳者だけでなく、江戸川乱歩や夢野久作等々。彼らがルヴェルよりもどちらかというと、田中早苗氏の惚れ込みようと見事な翻訳を褒めちぎっている。推敲を重ねに重ねたと思われる翻訳は確かに素晴らしかった。稀代のコントール(短篇作家)といわれるそうだが、まさに正統派の短篇たちだ。31篇を収めているので、1篇ずつは本当に短いのだが、簡潔だし起承転結が折り目正しく、テンポもいい。

モーパッサンはとんとわからないが、リラダンやポオと比較されると、そうなのか?と私は首を傾げてしまった。あそこまで怪奇性も残酷さもデカタンな雰囲気もない。登場するひとたちは、庶民、それも貧乏で不幸で孤独なひとたちばかりで、あくまで設定自体は日常なんだが、展開の意外さにえぇっとなる。「事実は小説より奇なり」というが、そういう印象。こんな話しが実際にあったんだろうと思わせるような日常における意外性。

筋はシンプルで簡潔なので、知らず知らずのうちに、この女は実はxxxxxで、最後はxxxxなんじゃないか、と勝手にオチを想像してしまうが、悔しいことに、一篇たりとも私の予想は当たらず、惨敗だった。とにかく結末を追いかけたくなる気持ちにさせてくれるので、31篇が瞬く間に終了。どうも「人情味溢れる」というのが、全篇を通して共通するキーワードらしいが、乾いた冷たい感じがなく、フランスらしからぬ(?)ウェットさで、ハッピーエンドも笑う箇所もなく、死体や自殺も多く、エンディングは何だか悲しいような切ないような気持ちになる。それでも次を読んでしまうというのが、人によっては中毒を引起すのかも知れない。ただ、私的趣味から云えば、怪奇趣味的意地の悪さの方がどうも好きみたいので、ルヴェルはちょっと私にはウェット過ぎる。

田中早苗氏の翻訳の勝利ということだな。。。
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