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黄夫人の手

おまけといっては失礼だけれど、久生十蘭が好きなら、こちらもどうですか?と古本カフェのお兄さんに薦められるまま買ってみた。大泉黒石って誰?この明治生まれの文学者の生涯は、途轍もなく波乱万丈の様相だった。
黄(ウォン)夫人の手 ---黒石怪奇物語集 (河出文庫)黄(ウォン)夫人の手 ---黒石怪奇物語集 (河出文庫)
(2013/07/05)
大泉 黒石

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「戯談(幽鬼楼)」
「曽呂利新左エ門」
「弥次郎兵衛と喜多八」
「不死身」
「眼を捜して歩く男」
「尼になる尼」   
「青白き屍」     
「黄夫人の手」

作家にしてロシア文学書。自称「国際的の居候」。ロシア人の父親と日本人の母を持つハーフ。ロシア名はアレクサンドル・ステパノヴィチ・キヨスキー。母親は黒石を産むとすぐになくなり、その後は母方の長崎で過ごしたり、父方のロシアで過ごしたり、パリに移ったり、スイスやイタリアにも行き、ロシア革命を逃れるために再度日本に来る。混血児というだけで十分差別を受ける時代に、ベストセラー「老子」を発表し、文壇の寵児となるも、特異の思想(なのかキャラクターなのか)や差別の中で、日本文壇からは疎外される。この文庫本はハードコピーで存在する貴重な作品集で、”初の文庫化” という快挙なんだそうだ。意外にもKindle版だとそれなりに作品が読める(青空文庫は作業中の模様)。あ、役者の大泉滉は彼の息子。写真を見る限り、父子そっくり。

アナキスト的思想で書かれた(という)「老子」が代表作だが、久生十蘭つながりで読んでみると、なるほどどこか似ているところもある。怪奇小説と括ってしまうのはどうかとは思うが、幽霊的な怪奇性よりも、奇怪な運命やあがき苦しむ人間や、世間の無情さや残酷さが後に残る。読ませてくれる筋書きは上手いので、途中でやめられないタイプの作品だ。でも久生十蘭のように淡々としたところはなく、(こう言っては何だが)不安な気持ちにさせられる。十蘭のような錬りに錬り、推敲を重ね、洗練させたという風ではなく、勢いがあるが、それが怖いのよね。作品から来る妖気というより、作家が醸し出す妖気に思えてならない(先入観故なのか?)

どれがよかったということもなく、全篇面白いし、没頭できるが、表題になった「黄夫人の手」が、長崎の中国人街の描写といい、登場者たちの人間関係の面白さといい、怪奇度具合といい、総合第一位というところかな。久生十蘭の文体と似ていなくもない。国際派という意味ではそこも共通。でも根底に流れる思想はどうなんだろう??
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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