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ゴーレム

グスタフ マイリンクは「ナペルス枢機卿」を読んだ時から次はこれ、と思っていた。チェコあたりの物語にはよく登場するゴーレム。ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形だが、西洋版の妖怪とでも云えばいいいのだが、バリエーションもどんどん増えているらしい(昨今のゲームのモンスター役も引き受けている)。そのゴーレムの怪奇物語なのかと思ったら、この本はゴーレムは時折言及されるものの、あまり本筋とは関係なく、プラハのユダヤ人ゲットーを舞台にした神秘的な魂の救済の物語だった。
ゴーレム (白水Uブックス 190)ゴーレム (白水Uブックス 190)
(2014/03/12)
グスタフ マイリンク

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プラハのユダヤ人街に住む宝石細工師の「ぼく」は、ある日、謎の人物の訪問を受け、一冊の古い書物の補修を依頼されるが、客の帰ったあと、彼について何も思い出せないことに気づいて愕然とする。どうやらその男は33年ごとにこの街に出現するゴーレムらしいのだ。やがて「ぼく」の周辺では、ゴーレムの出現に導かれるように奇怪な出来事が次々に起き始める。分身、タロック、地下迷宮、両性具有、至高の愛とグロテスクな淫欲、血の復讐、殺人事件……。数奇な運命の星の下に生まれた幻視者マイリンクが、ユダヤのゴーレム伝説を下敷きに紡ぎあげた、夢と現実の迷宮めいたこの物語は、第一次大戦さなかに出版されるや忽ちベストセラーとなり、ボルヘス、カフカ、ユングらを魅了したドイツ幻想文学の名作である。フーゴー・シュタイナー=プラークによる石版挿画を初収録。 (白水社のサイトより)

昼なお暗いユダヤ人ゲットーに住む住民たちは、みな陰鬱。古都プラハが今なおこんな暗黒部分を抱えているのかどうかは知らないが、勝手にイメージするプラハはこんなかも知れない。入り口のない部屋、迷路のような地下通路、縦横無尽の石畳の路地、酒場、タロットカード、カバラ 等々、19世紀の幻惑の魔術都市の暗闇が何よりも魅力的な本。

主人公の「ぼく」は過去の記憶を持たない。ぼくの夢とも現とも分からない場面から物語は始まる。帽子の裏に書いてあった文字は、アタナージウス・ペルナートとある。そしてひとりの貴婦人が「ペルナートさま、お助けくださいまし」と、飛びこんできた。ぼくは、ペルナートなのか・・・ ゲットーの言い伝えでは、ゴーレムは33年ごとに現れる。見慣れない、特徴がない、しかし昔に同じ顔を見たことがあるような男がゴーレムだ。そして今年がその33年目にあたる。古道具屋のヴァッサートゥルムと、彼の息子で悪徳眼科医のヴァッソリ、ヴァッソリを自殺に追いやった医学生カルーゼクとその仲間サヴィオリ、サヴィオリの愛人でペルナートに助けを求めた貴婦人アンジェリーナ。物語の中で、唯一真っ当に生きる存在として登場する、ペルナートの命の恩人ヒレルとその娘、奇跡を信じるミリヤム。 「ぼく」を巡る人々はみな、ゲットーの巣窟でさ迷うゴーレムのようだ。

ユダヤ教の教義も歴史も分からないけれど、元を辿ると同じというキリスト教の精神 - 人間がピラミッドの頂点に君臨し、死んだら天国に行くというキリスト教的世界観 - とは、全く正反対に位置するように思えてくる。夢の中にこそ確実な生があり、夢の中で肉体を離れた魂が生を帯びる。それはまるで現世を否定されているようにも見える。

ぼくが牢獄から開放された時、ゲットーは、ヨゼフ2世の命令により、「浄化」され過去の暗い迷路は一掃されようとしていた。そして、唖然のエンディング。これは輪廻転生なのか?それとも救いのない現世はゴーレム伝説のように永遠に繰り返されるのか?驚きながらも、どうしてよいのかわからないラストシーン。結局魔術都市プラハは永久の迷路だった。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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