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パノラマニア十蘭

「久生十蘭ジュラネスク」の次はこちらで。
パノラニア十蘭 (河出文庫)パノラマニア十蘭 (河出文庫)
(2011/09/03)
久生 十蘭

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これは傑作集(いや、いつも傑作集か・・・)。

「「女傑」号」
「巴里の雨」
「風祭り」
「幸福物語」
「手紙」
「半未亡人」
「田舎だより」
「ひどい煙」
「重吉漂流紀聞」
「ボニン島物語」

パリ物、都会物、戦地物、風俗小説、時代小説、漂流記と、相変わらずの七変化。いやはや面白かった。よくよく考えると、題材が優れているというのでもない、むしろこんな題材でどうして面白いのか謎だ。そして最後は、唐突に閉じられる。煙に巻かれて終わるのだが、巻かれてしまう幸せとでもいうような満足感がある。一つ一つの短篇自体は記憶がはっきり残るというタイプじゃないので、やはりストーリーの面白さで読まされるというより、文体の見事さに引きづられるんだろう。

コメディか?と云いたい「田舎だより」を挟んでしまうのが憎い。江戸を舞台にした時代物「ひどい煙」は、顎十郎を思い出した。戦時下恋愛もの「幸福物語」はなんだか新鮮。ジャンルを築き上げた感のある漂流者「ボニン島物語」のオチもいい。

決してエンタテイメント的な作品ではないのだが、じゃあシリアスな純文学かと云われると、エンタテイメントの要素は満載。裏に思想的なものが隠れていそうなのだが、飄々と淡々と、ある種冷徹に、そして常に作者と作品に距離がある感じが不思議だ。その隠れたものは、本当に隠れているのかどうかさえ、自信がなくなってくる。「十面体の黒ダイヤ」たる所以は、単に題材の豊富さではなく、この実は掴みどころのない距離感のことを云っているのではないかと、そんな気がしてくる。

結局古本カフェが仕入れきてくれた5冊は、全部いただいてしまった。最初に5冊を前にして、どれを買ったらいいのかと悩んだが、そんな必要はなかったってことだ(ま、そんなことだろうとは思っていたが・・・・)
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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