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パウラ、水泡なすもろき命

Isabel Allendeの父は、1970年代チリ大統領となったサルバドール・アジェンデのいとこ。チリクーデターの際は彼女も亡命を余儀なくされ、亡命中に書いた処女作が有名な「精霊たちの家」。「精霊たちの家」を読んだ時、マジックリアリズム的な内容ながら、いわゆるラテン文学によくあるカッ飛んだ訳判らなさはなく、しっかりした文章だなあ、と思った。今回は若くして死んでいく娘を看取ることになった彼女自身の人生を語るノンフィクションで、ゆっくりと、丁寧に丁寧に書かれているという印象。私は「精霊たちの家」よりこちらの方が断然好きだなあ。

パウラ、水泡(みなわ)なすもろき命パウラ、水泡(みなわ)なすもろき命
(2002/07)
イサベル アジェンデ

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「精霊たちの家」で登場する幻視力(超能力?)を持った一族は今回も登場するけれど、お伽噺的な要素は今回は排除されている。でも共通するのは文章の透明さ、舞台がラテンアメリカなのに、この透明さは不思議な程。ちなみに、娘パオラに呼び掛ける時に、イサベルは一貫して「きみ」と呼ぶ。最初は少し違和感があったけど、読み進むうちにその「きみ」のおかげで透明さが増し、凛とした美しさが増すんじゃないかと思えてきた。「きみ」なんて、よく思いついたなあ(翻訳家さん、すごい)。これはノンフィクションなのだけれど、構成なのか文体なのか、フィクションを読んでいる気にさせられる。亡命を余議なくされたアジェンデ一族という私には想像も出来ない特異性だけでなく、所詮フィクションは想像できる範囲のことしか描けないのだから、往々にして起こる驚きの現実がそれを超えていても不思議じゃないのか・・・

イザベルは、半植物人間のようになってしまった娘を救おうと必死になり、疲労し、憔悴する。昔の優美で快活な娘の思い出に浸り、奇蹟のような未来を期待していたイザベルが、徐々に一日一日をただ受け止めていくことを悟る。これが現実を受容れるという正しい姿なのだろう。西洋や日本とはまた異なる死生観、それはラテンアメリカらしさなのか、Isabel Allende固有のものなのかはわからないけれど、心情を切々と語る文章からそんなことが感じられる。

実は「精霊の家」が映画化されていると今回初めて知った。キャストがやたら豪華。メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ、ウィノナ・ライダー、アントニオ・バンデラス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ・・・これはちょっと見てみたい。

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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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