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身体巡礼~ドイツ・オーストリア・チェコ

珍しいですね・・・と誰にも云われていないけれど、自分で気恥ずかしい思いをしながら買ってしまった。「ドイツ・オーストリア・チェコ編」と云うからには、他の編もあるのか?あるらしい、次はイタリア・ポルトガル・フランス編が準備中だということだ。何はともあれ、中欧は魅力的だ。しかも墓巡りらしい。墓といえば、谷中墓地。思いっきりローカルで個人的な繋がりだが、そんなこんなで、売れ筋に絶対なりそうな、だから絶対買いそうにない、しかも良くも悪くも商業主義満載の新潮社の本を買ってしまったといわけ。
身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編身体巡礼: ドイツ・オーストリア・チェコ編
(2014/05/30)
養老 孟司

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売れっ子とはいえ、東大医学部である。しかも”脳”が専門。身体巡礼なんて仰々しいネーミングをつけられ、構えて読み始めた私が馬鹿だった。なんだ、大爆笑じゃないか?もちろん、爆笑だけではないんだが、でもとりあえず爆笑した。途中挟まれている写真はキレイなんだが、なんだかキレイすぎて、おしゃれな旅日記みたいだ。きっと新潮社が、”このタイトルでこの写真も入れたら、売れますよ・・・・” とか何とか云いながら、”いやあ、僕はどっちでもいいけどね・・・” なんて会話でもあったんじゃなかろうかと、余計な想像を巡らしてしまう。養老先生は、引退するまではちゃんとした医者だったんだろうけど、テレビの印象が強いものだから、どうも医学部崩れの仲間に入れてしまいたくなる(半分そうかもしれない)。医学部崩れはどこでどうして崩れるんだろうか?医学倫理なんて言葉があるけれど、倫理なんて考えていたら、日々臨床の現場には立てないのか?私事で恐縮だが、昔メディカル関係の会社で働いていたことがある。メディカルは金融関係と並ぶくらい、裕福な会社が多い。少なくとも薄利多売の小売業なんかに比べたら、相当なエリート集団だった。はっきりいえば、給料もいい。が、結局何がダメだったかというと、あまりの胡散臭さと、綺麗事の裏側の金満主義だった。要は薬なんて金儲けのためにやっているんであって、だったら人類を救おうみたいな題目を掲げなきゃいいのに掲げるものだから、胡散臭くてうんざりした。

で、この本だが、ハプスブルク家の霊廟や、骸骨の納骨堂、ユダヤ人墓地、カトリック聖地などを養老先生が実際に歩いて見て回っているが、旅日記でもヨーロッパの死生観を哲学的に云々と語っているかというと、案外そうでもなく、話しはあっちに飛び、こっちに飛び、そして道草を喰った挙げく、元に戻りを繰り返している。発想の鋭さというより、物事の裏側なんて二面的ではなく、十面的な視覚で「死とは何か?」を語る。その視点の面白さは、感心するばかりだ。70代も後半になっているから、当然達観する部分も多いわけだが、重箱の隅ばっかりをつつくようなつまらない語りとは対照的で、興味がないことはさっさと飛ばして済ましている (僕は、昆虫の方が好きなんだよねえ~~~、とか云いながら)。おまけに、変に理屈をつけない。それはそういうもんなんだ・・・・ でもそこから先は、実地主義に徹し、他人や文献やらからの受け売りは一切なし。あるところで、スパッと情報を絶つと、その先は、自分の脳みそをフル活用して、思考する。そして疑問を実地検証するわけだ。

文献に書いていないからこそ、その場にそのときの自分をおいてみる。その空気を味わってみる。そうすると、考えていたことが確認でき、深まり、新たな地平が広がっていく。
だから、現物に自分であたってみることがいちばん確実だ。人に振り回されないで済む。特にこういう問題は、無意識にやっている一般的な問題だから、文献を調べればいろいろと出てくる。でも、自然科学のスタイルは、現物を見て検証していくことだ。


つまり、ハプスブルク家の埋葬方法が、心臓とその他の内臓とそれ以外の身体の3つに分けて埋葬されたとか、ユダヤ人の墓地は絶対に壊さないとか、日本人が火葬にするのは、死んだ者と生きているものをはっきりと断絶されるからだとか、そんな知識はどうでもよい。疑問を持つということは、いや疑問が沸くということは、ネットのデータベース化された知識をひたすら追っても、疑問が沸く前に溺れてしまう。自分はここでいいや、と止まること、これは要らぬとなったら、捨てること。お腹が一杯になっても気持ち悪いだけである。人に振り回されないで済む・・・うん、これはいい。
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