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The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared

「窓から逃げた100歳老人」が邦訳のタイトルだけど、英語タイトルは実はもっと長い。スウェーデン発、全世界で800万部を突破したというベストセラーで映画化もされ、まもなく日本でも公開されるらしい。スウェーデン発ベストセラーで、映画化といえば、あのドラゴンタトゥーじゃない。スウェーデン発は外さないかもしれない。ベストセラーだけあって、英語版は出版元も多数あり、それぞれの表紙を比べて、これが一番気に入った。
The Hundred-Year-Old Man Who Climbed Out of the Window and DisappearedThe Hundred-Year-Old Man Who Climbed Out of the Window and Disappeared
(2012/07/12)
Jonas Jonasson

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ストーリーはというと、まさにこのタイトルどおり、100歳のおじいちゃんアランが100歳の誕生日のその日に、老人ホームから逃げ出し、意図せずして大金を手にし、意図せずして仲間を増やし、意図せずして人を殺め警察に追われ、というドタバタコメディー。そしてこのおじいちゃんがそもそも何者なのかという彼の100年の人生が、交互に展開されていく。

100歳の誕生日パーティーを目前に、おしっこ履きのまま老人ホームを逃げ出した主人公アラン。お酒(とくにウオッカ!)が大好き、宗教と政治が大嫌い。ひょんなことから手にした大金入りスーツケースをめぐってギャングや警察に追われることとなり、途中で知り合ったひと癖もふた癖もあるおかしな仲間とともに珍道中を繰り広げる。
一方、過去のアランはというと、爆発物専門家としてフランコ将軍やトルーマン、スターリンと日夜酒を酌み交わしては、エポックメイキングな人物として世界史の重大シーンにひょこひょこ顔を出す。アランの逃避行と100年の世界史が交差していく、二重構造ならぬ「百重構造」のドタバタコメディ!


フランコ将軍、蒋介石とその婦人宋美齢、毛沢東とその婦人江青、トルーマン大統領、レーニン、マンハッタン計画の中心人物オッペンハイバー、金日成とその息子、ドゴールに、ニクソンに、あ~もっと沢山登場したが、あまりにも沢山いて、覚え切れない。訪れた国も、祖国スウェーデンの田舎町から出発して、スペイン、アメリカ、ロシア、中国、朝鮮、ヒマラヤの山越え、中東のどっか、極東シベリア、パリにバリ、えっとあとどこだっけ??

政治と宗教が大嫌いなアランは、かくも見事に常に歴史的場面に居合わせ、時の大物と知り合いになり、大体において、何故か気に入られ、時には手を貸す羽目になる。独裁者、革命者、共産主義者、資本主義者と、政治も宗教も嫌いな彼は、そのあたりはまったく節操がない。その節操のなさはすなわち、彼のノンポリのなせる技で、そんな胡散臭い、主義主張から逃げ出すたびに、またぶち当たるのである。彼の人生はすなわち20世紀の歴史そのもの。大そうな政治のかけひきや、イデオロギー論争、宗教戦争、東西冷戦と核保有争い等々、すべて至極難しい顔をして語られるそれらが、アランに手にかかると、なんとも愚かしい不毛な争いにしか思えなくなってくる。あり得ない偶然やら、幸運やらが続くナンセンスなフィクションだが、過去から遡るアランの人生が、窮屈な老人ホームを抜け出し、偶然知り合い仲間になった変わり者たちとの冒険と重なった時、きっとこの本を読んだ人はみな思うんだろう。で、世界はそれほど複雑なのか?もしかしたら、もっとずっと単純になるのかもしれない。。。

ドタバタコメディーだけあって、コネタが多く、でもあまりに多すぎて何一つ思い出せない。スウェーデン発の世界観は、西寄りでも東寄りでもないのだが、実はアランたちは逃走過程で殺人事件も起こしているし、爆発専門家の彼は原爆製造にも結果加担している。祖国スウェーデンの高福祉国家はそれとなく批判もされている。最後の最後に、アラン最愛の猫がキツネに殺されてしまった時、悲しさと怒りのあまり(アランは生まれて初めて怒りを感じた)、感情的にダイナマイトで納屋を吹っ飛ばしてしまう。アランは単純に爆発専門家という仕事に尋常ならぬ興味を持っているだけだが、そうはいっても彼は実際にそれで何人もの人々を過去吹っ飛ばしてきたのである。アランという一見純真無垢な存在を主人公に据えながら、原爆の話しを大笑いのコメディという仮面を被せて堂々と扱ってしまったあたり、案外ブラックな本でもある。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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