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The Rise & Fall of Great Powers

かれこれ3年以上も前に読んだ 「The Imperfectionists」 は、かなりな掘り出し物で、若い現代作家にはとんと興味を示さない私が、絶賛しちゃおうかなあ、と思った作家。これはデビュー作だったけれど、2作目が出た暁には是非ともトライしようと思いながら、いつまでたっても新刊情報はでてこない。そしていくら私が面白いと云ったところで、「The Imperfectionists」は邦訳されるとなると、ちょっと地味だし、キャッチーな帯も作り難そうだし、難しいだろうと思っていたら、ある日偶然近所の本屋さんで邦訳版を見つけて驚いた。それが 「最後の紙面」 (日経文芸文庫)。ほお~、文庫で新聞社話しだからか、日経文庫で出したのね・・・ 見た目地味だがおススメだよ!
The Rise & Fall of Great Powers: A NovelThe Rise & Fall of Great Powers: A Novel
(2014/05/29)
Tom Rachman

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前作は軽やかで皮肉も笑いもあるが、どことなく醒めた視点とオムニバスのようで最後は見事に全体が昇華されるという緻密な構成が見事だったけれど、今回はそこに哀しみをふんだんに盛り込み、じーんとさせられっぱはし。実際には涙は流れないんだが、切ないほど哀しい。でもこの人、決して悲観的ではなく最後はそれでも・・・という余韻をたっぷり残してくれる。ストーリーは筋を追えても詳細はかなりつっかかるんだが、そんなことはどうでもいいから、とにかく先を読みたくさせるという、久しぶりによくわかんなくてもとにかく面白い英語本! 謎解きの面白さは前回以上で、読了後の後味が素晴らしくよくてやたら満足感に浸ってしまった。

今回のヒロインはTooly Zylberberg という少女。出だしは彼女が30代になりウェールズの田舎町でブックショップのオーナーになっている場面から始まる。そして、ストーリーは1980年代後半のタイでの子供時代、2000年前後のNYでの青春時代、そして現在ブックショップをやりくりする2011年と、この3つの時代を飛び跳ねながら繰り返し、彼女の謎の半生が徐々に明らかになる。いきなり誰だかよくわからない奇妙な人々が次々に登場し、その人間関係も状況も説明されず面喰うが、その面喰いに答えるように、彼女と彼女を取り巻く人たちの謎のパッチワークが少しずつ繋がっていくのだという戦法に気づくと、まんまとはまってしまった。「The Rise & Fall of Great Powers」は ”大国の興亡” ってことがだ、半世紀に渡る世界の歴史やら技術の発達やらも織り込まれており、そこはさすが元ジャーナリストのRachman。

ロシア亡命崩れ(?)、偉大なるビブリオマニアにて思想家のHumphrey、 チャーミングだがその自由闊達さで周りを混沌に落とし込むSarah、消えては現れまた消える謎のカリスマVenn、 Toolyのブックショップで働く飄々としたFogg、青春時代のboyfriendのDuncan、父(なのだと途中で確信できるが)でありながらToolyを手放すPaul・・・・・ 

幼少時代から、所謂世間というものから完全に逸脱した世界の中で、奇妙な人々に育てられ、自ら本の虫となり、世界を放浪し、居場所を求めるようにさまようTooly。自分でも理解できぬまま、愛してくれる人もいるのに、でも放置され傷つけられ続けた彼女の人生の中で、実の親でも親戚でもないHumphreyと暮らした日々が、今の彼女を育てた。”Conversation and Debate” と云いながら開始するToolyとHumphreyの会話の知的で可笑しなこと。ロシア語訛りで、Tooly を ”Darlink” と呼ぶHumphreyの怒りに任せた熱弁と、知識は劣っても勘は鋭いToolyとのデコボコ会話は見事だ。一件、無茶苦茶で常識からは大きく逸脱している偉大なる思想家は、Toolyに世界の歴史と科学と哲学(チェスもだ!)、そして自分で生きることを教え込んだ先生であり、友であった。30代になり、長らく離れていたHumphreyと久しぶりに再会し、老いて極貧の酷い暮らしをしていた彼の最後を見届けたのはToolyだった。そしていよいよ閉店に追い込まれそうになっていたブックショップが、Humphreyの愛書で満たされるラストシーンは、「The Imperfectionists」のあの軽やかな最後を思い出した。

出版社の皆様、「The Imperfectionists」 も面白いですが、こちら 「The Rise & Fall of Great Powers」 も前作を上回る面白さですので、是非とも邦訳のご検討を・・・・ 
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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