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ハープと影

ラテンアメリカ色々あれど、このAlejo Carpentierは大御所ながら、どうもぼんやりしている。どうしてなんだろうと、過去読んだ本をみていたら、あ、まだ2冊しか読んでいなかったのね。その1 「この世の王国」、その2 「バロック協奏曲」。もっと読んだ気になっていたが、何のことはない、買ったまま積み上げている本の方が多いだけのことだった。
ハープと影 (新潮・現代世界の文学)ハープと影 (新潮・現代世界の文学)
(1984/11)
アレッホ・カルペンティエール

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三部構成のこの本は、第一部「ハープ」が、後に教皇ピウス9世となる、若き聖堂参事会員のマスタイが、コロンブスの列聖調査誓願書に署名するに至るまでのいきさつ。一転第二部「手」は、そのコロンブスが死の床に横たわり、自らの過去を回想するという400年前の話し。そして第三部「影」では、再び時代は19世紀に戻り、コロンブスの列聖問題を巡る裁判の話し。とっつきにくかった第一部の印象からうってかわり、第二部に登場するコロンブスは、聖人ならざるどころか、とんでもない放蕩者、酒・女・金にしか執着しない男として描かれる。カトリックの女王イザベルと肉体関係はあるし、当時の社会からすると、宗教的には大変否定的に描かれ、アメリカ大陸を発見したとされる航海者でありながら、天体観測を使いこなせず、地図も完全には読みきれず、海里測定も怪しい。そして大陸発見後スペインに戻るも、期待していた「金」がなかなか見つからず、その代替として、インディオたちを奴隷として旧大陸に大量に送り続けるということまでやってのける。ある程度は史実であろうが、もちろんそこにはカルペンティエールの脚色があるわけで、それにしてもとびっきり面白いコロンブス像になっている。そして最後の第三部。コロンブスを列聖しようとするための裁判が行われている現場の実況中継。そこに登場するのは、生者、死者入り混じる歴史上の有名人たち。裁判長やヴァチカン関係者も含めて、彼らはえげつなく毒を吐きまくる。結果、コロンブスの列聖決議は否決されるのだが、挙句にはコロンブス自身の亡霊も現れ、自らの真の姿を得られないまま落胆し、悲嘆にくれた彼は、サン・ピエトロ広場で一人佇むのである。

ラテンアメリカの今を語るとき、その発端となったコロンブス神話を完全に解体させたカルペンティエールだが、彼がいたからこそ、存在しているラテンアメリカの国々にとって、聖人であろうと俗人であろうと、改めて彼の存在を問うことは、今を問うことでもある。彼の影の部分は、すなわち現代ラテンアメリカの影の部分でもあるのだろう (ってことでいいのかな?)

実はこの新潮社の「新潮・現代世界の文学」シリーズは、私にとってはラテンアメリカ文学(それはガルシア・マルケスを発端とするのだが)に出会った最初のシリーズで、1980-90年代によくお目にかかったのだが、今見ると、字が小さい・・・・ きっと昔は本ってこれが普通だったのかも知れないが、時折2段組もあるこのシリーズは一瞬後回しにしようかと思ってしまうのよねえ。。。段々軟弱になっていく自分に鞭を打つようにこんな硬派な本を時には読まなくちゃいかん、いかん。
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