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修道院回想録

ポルトガル語圏で初のノーベル文学賞受賞者のJose Saramago。久しぶりに手を出した500ページの重い本。これは彼の代表作。Jose Saramagoは比較的プロットがしっかりしている読みやすい作家の範疇に入れていたから、重さを無視して読み始めていたが、代表作は大作だった。読みにくさはまあ、よしとしても、いやはや、何だか凄い本だった。
修道院回想録―バルタザルとブリムンダ修道院回想録―バルタザルとブリムンダ
(1998/12)
ジョゼー サラマーゴ

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ポルトガルがスペインと鎬を削っていた18世紀。時の国王ジョアン5世は、フランシスコ修道会士と、王妃に世継誕生の祈祷が成就すればマフラに修道院を創建するという取引をする。一方、王の信任篤いブラジル生まれのローレンソ神父は空飛ぶ機械『大鳥』を、戦争で左手を失った退役兵士バルタザルと不思議な透視術をもつブリムンダ夫婦の助けを得て試作するが、異端の嫌疑をかけられる。音楽家スカルラッティと王女マリーアなども絡んだ一大歴史ロマン。

ポルトガル王家の豪華絢爛な生活、庶民の猥雑な暮らし、そこに不慣れなフランシスコ修道会の話しも加わり、壮大な物語プラス、うねるような長々とした文章。会話文に「  」なしという苦手なパターンに、修道院の建設という宗教関連の記述がてんこ盛り。とにかく描写がてんこ盛り。決して読み解けたわけでもないが、今までのSaramagoの印象は私の中では大きく変わった。おそらくこっちが彼の王道で、いままで読んできた後期の作品は、読みやすくなっただけのことだった。私程度が気楽に読める本ではなかったが、Saramagoの株はこの1冊でグンと上がった。

18世紀に、空飛ぶ機械『大鳥』を作るというローレンソ神父や、マフラの修道院建設は、ほぼ史実なのだという。当初は、単なる修道院の建設のはずだったのが、時代と、時の王ジョアン5世の我侭(?)、己の生きているうちに、バチカンを凌ぐ修道院を立てる!、で、世にも壮大な建築工事は、13年の歳月と国中からかき集められた労働力と、過酷な労働条件の犠牲となった多くの人々の上に、1730年に開所した。(参考:「マフラ国立宮殿」) 画像検索ででてくる画像を見てもキレイな宮殿くらいにしか思えないが、相当に大きなものらしい。

こんな歴史を背景にしながら、語られるのは、バルタザルとブリムンダの愛の物語。これはもう魂の物語としかいいようがない。お腹が空いた時だけ、すべてが透けて見えてしまうブリムンダは、毎朝目覚めた時、決して目を開かず、静かにパンを食べ、それから目を開ける。戦争で左手を失いながらも、空飛ぶ機械『大鳥』の試作を助け、その後マフラ修道院建設に従事するバルタザル。彼らはローレンソ神父亡き後、空飛ぶ機械『大鳥』をずっと隠し持ち続ける。空飛ぶ機械『大鳥』の飛ぶ理論というのは、飛行機の前身を思わせるようなメカニックな理論ではなく(笑)、そこに込められるのは、人々の「意欲」(翻訳の問題だが、”意欲”はちょっと苦しい単語だな)。透視力を用いてこの意欲を集めるのが、ブリムンダの仕事。Saramagoは無神論者だとの記述も見たが、人々を強制し、多大な犠牲を払ってまで建築した修道院や、異端審問、ユダヤ教信者の迫害などカトリックへの批判もチラチラと見える。カトリック全盛の時代に、高貴な魂を持つ二人の人物、バルタザルとブリムンダを通して見えるのは、人間の普遍的な姿だったりする。

次にポルトガルに行ったときは、このマフラ修道院を訪れたい。昔、リスボンを訪れた時にまず思ったのは、モニュメントの類が何だかやたらデカイこと。そして、ヨーロッパの最西端ポルトガルは、もうヨーロッパではないという印象。ポルトガルの本はとにかく少ないので、私の中ではポルトガルというものに対する積み上げが非情に少ないのが悔しい。桁外れというか、桁の基準がちょっと違う気がするポルトガル。。。
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