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船の救世主

では早速「その時は殺され・・・・・」・の次へ。これもやたらコストパフォーマンスが悪い140ページで1,600円。でも薄いのでついつい手を伸ばして読んでしまえる。日本での出版はこちらが後だけれど、作品自体はこちらが先に書かれている。
船の救世主船の救世主
(2000/10)
ロドリゴ レイローサ

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沈んだ船を引きあげる任務にある海軍大将オルドーニェスは、それなりに優秀な印象の几帳面な男。彼には気がかりなことがあった。それは、軍の方針ですべての将校が精神鑑定を受けなければならなくなったこと。精神の異常が見つけられはしまいかと心配する オルドーニェスは、図書館で心理検査に関する文献を読んでおくことにした。そこに「利用性」というおかしなタイトルのパンフレット冊子をオルドーニェスに 押しつけ、意味不明な哲学的なことを一方的に語る、おかしな男が現れる。

最初は奇妙で不気味な存在はこの図書館で出会った男だけなのだが、その後、オルドーニェスの担当になる精神科医のフェルナンデス博士もどこか奇妙で、フェルナンデス博士の師であるポンセ博士が、なぜか図書館で出会った男と、重なりあう幻想(?)が現れ、精神鑑定用のマクレランド図版のテストで失神していしまうオルドーニェスも、どこかおかしい。そして唯一まともに見えたオルドーニェスの妻アマリアも、奇妙な行動をする。前作同様、行間があり過ぎて、この奇妙な人々の関係も背景も何にも説明してくれないという、冷たく、薄気味の悪い小説。だが、永遠に説明がないところが狂気なんであって、そこになるほどという理屈やオチがあれば怖くはない。更に云えば、ここに登場する人たちの世界の中では、おそらくすべてが至極まともな日常である。結局一番怖いのは、そういうことだ。

余談だが、本の最後に「初版第一刷2000部」とご丁寧に刷数まで書いてくれている。おそらく、私が幸運にも初版を入手できたわけではなく、初版2000部以外の版はない、と考えるのが妥当。海外文学の邦訳ばかり読んでいると、よほどの古典でもない限り、初版にあたることは珍しくも何ともない。そのくらいガイブンは人気がないってことになる。2000部でも発行してくれるのは、大変有難い話しだが、通常印刷屋さんにちょっとした印刷物を頼むのに2000はない。2000も5000も一緒だからと、5000にしたりもする。ただの印刷ではなく、これは本。装丁やら表紙デザインやら、もちろん翻訳やら校正やら宣伝やらを考えると、2000部はやってらんねぇーよ、という数字だ。おかしいなあ~~こんなに面白いのに・・・と思っているのは、どうやら私以外には1000人くらいしか日本全国にはいないのかも知れない。さらにまずいことに、このRodrigo Rey Rosaの邦訳は、あと1冊しか発見できなかった。1958年生まれの文学界では若い部類に入れてもいい現役作家なのに、である。彼を見出したポール・ボウルズの威光はどうしたんだろう?ポール・ボウルズくらいじゃダメなのか?
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