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アルゴールの城にて

「シルトの岸辺」に続くジュリアン・グラックはこちら。これが彼のデビュー作。かのアンドレ・ブルトンが絶賛したとか・・・ シュールレアリズム多々あれど、ブルトン絶賛だけあり、これはシュールレアリスム中のシュールレアリスム。
アルゴールの城にて (岩波文庫)アルゴールの城にて (岩波文庫)
(2014/01/17)
ジュリアン・グラック

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広大な海と森に囲まれた古城アルゴール。ここを舞台に、男2名、女1名、登場するのは以上。三角関係物語といってしまうとストーリー自体はそれだけのこと。が、ここまで練りに練った比喩で描かれた文章はグラック以外にはない。うねうねの比喩が多層的に続き、出だしの城の描写だけで10ページ以上を費やし、これだけで本が終わるのかと思った位。深い森と忘れ去られたような礼拝堂。会話らしい会話もなく、登場人物の心情描写もすべては風景描写の一部のようで、決して難解な文章ではないけれど、これでもかと比喩を重ねると、はて、この3名は生きているのか、死んでしまったのかさえもよくわからなくなってくる。もっともそんなことはどうでもいいことなのかも知れない。この現実感の片鱗さえ感じさせない物語には、生死も時間もない。あるのは、三人の亡霊の悪夢だけだ。

「シルトの岸辺」でゴングール賞を与えられながら、それを拒絶したジュリアン・グラッグは、ブルトンのシュールレアリスム運動の一端を担う作家ではなく、おそらく彼はそのような時代の潮流とは全く別の世界で孤高に生きた異端の作家だったようだ。「シルトの岸辺」は「アルゴールの城にて」を読んだ今なら、随分と常識的な範疇の作品に思えるが、どちらにも共通するのは、孤高の寂寥感。生身の人間臭さが微塵もないのだが、この絵画のような彼の世界もまた小説ならではの面白さだ。具体的な説明など一切省いた神秘的な文体は、誰も真似できまい。
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