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血の伯爵夫人(2)

さて、後半。
血の伯爵夫人 (2) (文学の冒険シリーズ)血の伯爵夫人 (2) (文学の冒険シリーズ)
(1998/09)
アンドレイ・コドレスク

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バートリ・エルジェーベトの狂気については、それを殊更煽るほどではなかった気がする。むしろ終盤にかけて尻すぼみした位。彼女の政敵たるハプスブルグ家などによるでっちあげ説もかなり信憑性があるし、本文ではその部分もしっかりと述べている。たしかにグロテスクではあるが、若さと美貌を保つため、処女を片っ端から殺し、その血を浴びたとされる伝説も敢えてあっさり記述した感じがする。

期待していたのは、その末裔のドレイクの方。共産主義体制崩壊後のハンガリーの混沌たる怪しげな空気と、ドレイクのかつての恋人の娘や、彼女が所属する政治(?)団体、彼女の大学の歴史教授等々、登場人物は揃えたものの、バートリ・エルジェーベトの描写に匹敵するほどの凄みはやや不足。交互に展開するバートリ・エルジェーベトとドレイクの話しは、双方関連しながら進んでいく。自らの殺人を告白していく中で、バートリ・エルジェーベトの人生が語られる構成だが、結果、その結び付きも若干弱い。

と、文句が多い割には、最後までページをめくるスピードは落ちず、楽しんでしまった。バートリ・エルジェーベトの友人にして、書記官のアンドラーシュが、彼女の死後、彼女の裁判記録としての供述調書を書き上げる。その証言を記録しながら苦悩する彼の葛藤は痛ましい。親友で保護者で崇拝するエルジェーベトが、自らの書く文字により誹謗され、怪物に変えられていく。それでも必死に ”そうではないはず” のエルジェーベトを残そうとする。そして最後は、ドレイクにこう語らせる。

私の祖国は、数世紀にわたる残虐と怠惰から受け継いだ、いまいましい無気力に打ち勝つことはできないのかもしれません。けれども、私は彼女が犯したすべての罪について自分を告発いたします。
個人的には、自分で何も克服できなかったことがわかっています。
私は誰でもありません。ハンガリーの国王なのですから。


ハンガリー貴族であるという出自から逃れ、匿名で生きていられたアメリカ社会から、再び自分の過去・一族の過去を背負うことになったドレイクの最後の言葉。これはすなわち、アンドレイ・コドレスクが叫ぶ、祖国ハンガリーへの警鐘でもあり、思いでもあるのか?
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