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裏面 ある幻想的な物語

最近注目の白水Uブックス-海外小説 永遠の本棚。イサク・ディネセンを立て続けに2冊刊行し、フラン・オブライエンの「第三の警官」を復刊し、そして、私が知らなかっただけなのだろうが、この『裏面 ある幻想的な物語』も復刊。

裏面: ある幻想的な物語 (白水Uブックス)
裏面: ある幻想的な物語 (白水Uブックス)

巨万の富を持つ謎の人物パテラが中央アジア辺境に建設した〈夢の国〉に招かれた画家は、ヨーロッパ中から集められた古い建物から成る奇妙な都に住む奇妙な人々と出会う。画家はこの街の住民となり、数々の奇怪な体験をするが、やがてパテラの支配に挑戦するアメリカ人の登場と時を同じくして、恐るべき災厄と混乱が都市を覆い始める。幻想絵画の巨匠クビーンが描くグロテスクな終末の地獄図。作者自筆の挿絵を収録。

元々はボヘミア生まれの画家であるクビーン(1877~1959)が書いた唯一の長編小説。どんな絵を描く画家だったかというと、ゴヤ、ムンクの系譜を継ぐ、グロテスクな怪奇幻想の画家。

主人公はクビーンと同じく画家。ある日、はるか昔の同級生クラウス・パテラの代理人と称する男の訪問を受けた。パテラは大富豪となり、中央アジアに「夢の国」を建設し、私を招待するため使いをよこした。最初は半信半疑の主人公、でも多額の旅費の小切手をもらい夫婦揃って出発する決心をする。う~ん、いくら巨万の富を得たからといって、いくら中央アジアの土地が安そうな場所だからといって、国をひとつ建設してしまうってお金があれば出来ることなのか?なんて、この時点で既に現実離れしているが、そもそもが幻想画家の幻想小説なので、気にせず、先に進む。「夢の国」は文明から隔絶された奇妙な国だった。ヨーロッパ中から集められた古い建物から成り、建物だけではなく、この国では何もかも古いものだけで成り立っている。住民の選定もパテラが決める、つまり彼から招待されない限り、この国には入国できない。

読み出す前から、本の帯には ”夢幻都市ペレルの崩壊” とあるわけだが、何故、どうやって崩壊していくかという理由はどうでもいい。その崩壊していく過程が、なんともグロテスクで非現実的。常に曇天でどんよりと淀んだこの国には、ひとかけらの明るさもない。友人パテラに会おうとしながら、結局何年も会えずにいるかと思うと、パテラの幻(?)が、「私はいつも君のそばにいたのだ」と語りかける。破滅へのプロセスを加速させたのは、パテラの支配に挑戦するアメリカ人(っていきなりアメリカと云われると、興醒めだが・・・ ) の登場だが、彼がいようといなかろうと、このパテラは、内部から崩れ、腐敗していった。

この本の面白いところは、この夢幻都市ペレルが、創造者パテラの国でありながら、そこはユートピアでも彼の独裁国家ではないところ。パテラは、軍事支配も思想統制も経済的掌握もしていない。いうなれば、近代国家が当然持つべき国家の基本がない。そこに登場するアメリカ人の百万長者が、アメリカらしく自由主義を掲げたり、国民はみなパテラの集団催眠に掛かっていると主張し、開国を試みたりするするわけだが、そこに何か文明批判があるかというと、あまりないような気がする。それよりは、都市が崩壊していく過程、民衆がおちいる眠り病や、ありとあらゆるものが腐っていく珍現象や、様々な生物が街に蔓延ることでもたらされる荒廃等々のディテールがいい。クビーンの描いた夢幻都市ペレルはこんなところ。
夢幻都市ペレル実際、絵よりも文字で読むペレルの方が気持ち悪い。
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