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モラヴァジーヌの冒険

ブレーズ・サンドラールといえば、『世界の果てにつれてって』しか知らず、しかもその『世界の果てにつれてって』はもう何年寝ているのかわからなくなってしまったが、ウチの未読本棚で眠り続けている。一見そのちょっと取っ付き難そうな本も作者も何者なのかわからなかったが、どういうわけか彼の作品の復刻版なら読まなきゃいけないと、先に『モラヴァジーヌの冒険』に手をだしてしまった。

モラヴァジーヌの冒険 (KAWADEルネサンス)
モラヴァジーヌの冒険 (KAWADEルネサンス)

主人公のモラヴァジーヌは、「最後のハンガリア王の唯一の正統なる子孫」として未熟児で生まれ、18歳のときに公女リタの腹をぶったぎって殺し、投獄された。そして語り手の私は、ブレーズ・サンドラール自身であり、このぶっとんだモラヴァジーヌに心酔し、彼と行動を共にする。20世紀の初頭を舞台に、二人の冒険はロシア革命の真っただ中での暗躍、南米の密林では、原住民から崇拝され崇めたてまつられ、そしてアメリカに渡り、次はパリへ、そして最新の文明の利器である飛行機に夢中になり、飛行機で世界一周する計画を抱いたモラヴァジーヌはその後行方知れずとなる。

第一次世界大戦へと突入していく世界を舞台に、真理も理屈も知ったこっちゃない、ただ行動あるのみ、と駆け巡るモラヴァジーヌは痛快というにはあまりにも人並み外れた人物で、その波乱万丈の人生は凡人にはついていけず、というか、荒唐無稽と言った方がいいかもしれない(私もあんな人生を送れたら・・・という憧れレベルではないな)。 

そのモラヴァジーヌの冒険談がいかにして書かれたかを語る地味目の語り手だが、どうしてどうして、実際に世界中を放浪したという作者サンドラールとこのモラヴァジーヌは、私の中では区別がつかないほど、クロスオーバーしている。

訳者あとがきでも触れられているが、私も感じたのはボリス・ヴィアンとの共通性。60年代に人気が再燃した両者はフランスの若者の支持に支えられたが、アンチヒーロー的で既存の枠組みを易々と無視し、ケッ!とこき下ろし、しかめっつらの文壇人をみると、肩をぽんとやって「そう真面目ぶるな、どうせおたがいにそうたいしたもんでもないんだから」とやりたくなるようなのだ。 もっともこの「モラヴァジーヌの冒険」の訳者は、ヴィアン作品でお馴染みの伊東守男氏なのだが・・・ 

暴走する生、爆走するエネルギーは文学の枠を超える。すべては無秩序、人間の生命、思想、歴史、戦い、発明、商売、芸術すべて無秩序。それを秩序だてようとするなど愚の骨頂。だとすれば真理など求めず、行動するしかないだろうと叫ぶモラヴァジーヌに、現代のシラケ社会に蘇りカツを入れていただきたいと願ってしまう(そして、私にも一発)
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