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Look Who's Back

邦訳は『帰ってきたヒトラー』。現代に蘇ったヒトラーの話しらしい。ちょっと面白そうだ。世界的ベストセラーでもあるらしい。が、ベストセラーが私の好みであることは少ないし、何よりも1,700円づつの上下巻なんて絶対に嫌だあぁ。こういう時に役に立つのが、Kindleだ。こちらは何とUS$7。迷わずこちらを選択。

B00ELIF0Z2Look Who's Back
Timur Vermes Jamie Bulloch
Quercus 2014-03-27

by G-Tools


あーなるほど、ベストセラーになるものもわかる気がする。確かに可笑しい。そしていい具合に世間を騒がせるようなネタも満載。1945年に自殺したとされるヒトラーが、突然2011年8月のベルリンで目覚めるというタイムワープから本篇は始まる。本人も最初は俺はどこ?の状態だが、案外あっさりとタイムワープの謎はほったらかし、2011年に適応すべく、持ち前のパワーで奮闘(これは、さすがにヒトラーだ)。一方周りにいる人間は、ヒトラーそっくりの芸人だと信じて疑わず、そのなりきりぶりに感心し、揚句、勘違いが勘違いを呼び、舞台にでるわ、YouTubeにのるわ、テレビに出るわの人気モノになる。当時のドイツやヨーロッパの状況に対する知識があれば、当時の登場人物や起こった事件への参照が多いので、かなり楽しめるが、まあ一般的な歴史知識だけでもそれなりには楽しめる。

始めは60年以上の時を飛び越え現代に降り立ってしまったかつてのドイツ帝国を率いる総統が、単なるズレたオヤジなのにいちいち笑う。現代の利器(携帯やテレビのリモコンやら、インターネットを活用した情報収集方法やら・・・)は今となっては当たり前のものだが、60年前に遡ると、なるほどそう見えるのね、という小ネタに笑う。

そんな小ネタはやっぱり小ネタで、この作品のポイントは、あのヒトラーに現代ドイツを批判させるというところ。本篇は一貫してヒトラーの一人称語りだが、ズレたオヤジが、こと政治や社会制度を語り始めると、その英語はちょっと難しい。難しいが、それなりに読んでいると、あのヒトラーのしかも1940年代の狂った時代の理屈が妙に正当性を帯びてくるような錯覚に陥る。一部信奉者はいるんだろうが、悪の権化だと刷り込まれたヒトラーという強烈なキャラクターにどこか共感を感じてしまう怖さは、もし自分が当時ドイツの国民で、アーリア人であったなら、彼への支持を表明してしまうのかもしれないという怖さ、つまり、当時の国民は決して今の私たちを変わることはなく、あの時代のあの状況に置かれると狂気を狂気と感じないのかも知れない。

決してヒトラーを魅力的な人物として描こうという意図はないと思う。むしろ、魅力的に映ってしまうことの危うさ、現代のグローバル社会の危うさをしみじみ感じる作品。一人一人が自主独立し、決して扇動されず、流されず、それはとっても難しいことだ。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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