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雪の中の軍曹

Mario Rigoni Stern と云えば 「雪の中の軍曹」 である。が、その評判の高さと相反して、古本市場では高止まりの様相が続いている。もっとも凄惨な戦争記録文学は正直、気が滅入るようで敬遠していたことも事実。とうことで、
雷鳥の森 (大人の本棚)
マーリオ・リゴーニ ステルン Mario Rigoni Stern
4622080516

だとか、
リゴーニ・ステルンの動物記 -北イタリアの森から- (世界傑作童話シリーズ)
マーリオ・リゴーニ・ステルン グザヴィエ・ドゥ・メーストル
4834019950
なんかを先に読む羽目になった。
読了後、あまりの意外な戦争記録文学にちょっと驚いた。

479420552X雪の中の軍曹
マリオ リゴーニ・ステルン Mario Rigoni Stern
草思社 1994-05

by G-Tools
 yukinonakanogunso

第二次大戦中、著者は軍曹として東部戦線にいた。酷寒のロシアである。1942年から1943年のスターリングラードの攻防戦でドイツ軍がロシアに大敗し、総退却を余儀なくされる。そして同盟国の一員であったイタリア軍も悲惨な敗走劇を強いられる。本書はそのひたすらに敗走を続けた記録だ。

だが、これは軍隊の敗走の記録ではあっても、戦争の文学ではない。苛烈な戦闘の場面も、むしろ背景として語られる。語り手たる「私」の関心は、あくまで、極限状況下に置かれた人間の上に向けられている。しかもその人間とは、仲間であるイタリア軍兵士だけでなく、ドイツ軍兵士、あるいはソヴィエト軍兵士でもあり、さらには、戦場となった大雪原の一隅に、息をひそめるように生きているロシア人農夫やその家族である。

静かな本だった。もちろん極寒のロシアの大雪原をただただ歩いて敗走する兵士たちの姿に戦意などはなく、食べるものも寝る場所もなく、疲れ切った体に重い銃器を担ぎ、ただただ歩くのである。そんな本を美しいと感じてしまうのは、あまりにも罪悪感があるのだが、静かで美しい本だった。

狂気の戦争もある。しかしマーリオ・リゴーニ・ステルンは、何日も眠れぬ日々を過ごしながら、人間としての一線は守りきった人だったのかもしれない。この大戦後、マーリオ・リゴーニ・ステルンはヴェネト州の小さな田舎町で農夫として暮らし、自然とそこに生きる動物たちをテーマに本を書いた。最初に私が読んでしまった「雷鳥の森」 や 「動物記」である。「雪の中の軍曹」があったからこそのこれらの本の重みを今回初めて知った。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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