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消しゴム

え~~、おそらくタイトル買い。光文社「古典新訳」は、掘り出し物もあるので時折チェック要。

4334752756消しゴム (光文社古典新訳文庫)
アラン ロブ=グリエ Alain Robbe‐Grillet
光文社 2013-08-07

by G-Tools

ヌーヴォー・ロマンの代表的作家Alain Robbe‐Grillet、私にとっては、アラン・レネ監督の映画 『去年マリエンバートで』 のシナリオを書いた人と云われた方がピンとくる。さて、アカデミック領域にはとんと疎い私には、Nouveau romanなる潮流がどんなものであったか、まるでわからない。そもそも従来と違う何がNouveauなのか?と、このあたりは、最後のロマン主義者~バルベー・ドールヴィイの小説宇宙でも、とても面白くブンガクを語ってくれる中条省平氏の解説で勉強してみた。何が新しかったかというと、
・従来のリアリズムのアンチであること。
・1950年代の二大巨頭、サルトルとカミュの「実存主義」、すなわち、”世界の不条理や理不尽に反抗する人間の自由への意思” へのアンチであること
従来の自明の至上価値と見なされてきた人間主義を疑う潮流、これが「構造主義」というらしい。人間主体が実は脆弱な作り物に過ぎないという、近代的な人間中心主義への批判。
この潮流の中で、アラン ロブ=グリエの「消しゴム」が発表された。

・・・・云々、何だかよくわからなくなってきたところで、中条氏、「あとがき」でこの文学的革命をジャズのたとえの中で噛み砕いてくれた。うん、こっちの方が私向きだ。
人間精神のエネルギーを無条件で賛美するような実存主義とピ・バップに対して、マイルスとロブ・グリエは物理的な素材(音/言葉)を精緻に構築する道を選んだ

勉強はさておき。。。
殺人事件発生の報せを受けて運河の街にやってきた捜査官ヴァラス。しかし肝心の遺体も犯人も見当たらず、人々の曖昧な証言に右往左往する始末。だが関係者たちの思惑は図らずも「宿命的結末」を招いてしまうのだった。“ヌーヴォー・ロマン”の旗手、ロブ=グリエの代表作。
殺人事件とその犯人を探し出す捜査官ということでは、ミステリー仕立てなのだが、そもそも犯人は最初に読者に語ってしまうので、謎解きが目的の探偵小説や推理小説ではない。ヌーヴォー・ロマンなるもの、さすがにただただクールで緻密な描写が続く。勝手に主人公捜査官ヴァラスと、町の人々という構図を描くとそれは違うと途中で気づく。ここには主体がない。代わる代わる登場する人物たちのその視点で細かく場面転換されるが、章や段が明確に分かれているわけでもなく、同じことが何度も繰り返し書かれているが、少しずつ何かが違う。そして現実的にはたった24時間の出来事であるのに、その24時間の中で、時間が行ったり来たりする。

殺人事件の起きた街を彷徨うヴァラス。決して迷路のような複雑で閉鎖的な街ではないとわかるのだが、いつまでたっても明確な輪郭が現われない。謎解きではないとしても、登場人物の素性は最後まで明かされない。どうして殺したか、殺人者は一体どんな組織で、被害者はどうして・・・ のような従来ミステリーに必須とされた伏線もない。では、ぼやけた輪郭のまま私の?をいつまでたっても答えてくれないこの小説にイライラするのかというと、これがしない。唯一のどんでん返し的面白さと云えば、殺されたはずのデュポンは生きていて、デュポンの犯人探しをしていたはずのヴァラスが、結局デュポンを殺してしまうということ。でもこれさえ、そこに驚きはない。

主体もメインストリームもない物語。読了後、私の脳裏に浮かんだのは、ピカソのこんな絵だった。
picasso2.jpg picasso1.jpg
視点がひとつではなく、パッチワークモザイクのような小説。実存主義も構造主義もピンとこないが、また読みたいロブ=グリエ。
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