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ふくろうの眼

未読の「文学の冒険」シリーズ。現代ドイツの千夜一夜物語(らしい)。
Gerhard Kopf は1948年生まれというから戦後世代の作家。難解というコメントも見たが、どうも私は気に入った。で、他に本はないのかとググって見たが、どうも邦訳はない様子。知名度もないし、レビューも僅かばかりで、残念ながらどうも人気はないみたいだ。

4336030626ふくろうの眼 (文学の冒険)
ゲルハルト ケップフ Gerhard Kopf
国書刊行会 1993-07

by G-Tools
 フクロウ 

ここはドイツの片田舎トゥルゼルン。今夜も眠れぬ郵便配達夫がひとり。両眼を開けて生まれてから、どちらの眼も閉じたことがない。その不眠ゆえ彼の眼は〈ふくろうの眼〉、封を切らずに郵便の中身を見透す眼、となった。使者たるもの、通達の内容を知らねばならぬ。その信念のもと片端から手紙を読みまくり、あげく頭の中は風変わりな住人たちの秘密でいっぱい。よこしまな夜の視覚はますます冴えわたり、眠れぬままに紡ぎ出したる24の物語。狂暴きわまる運転で村中を震えあがらせた産婆への奇想天外な復讐譚。大学者フンボルトとともに世界中をかけめぐったオウムが語る見聞録。異国に囚われた男とオールドミスの悲しい恋の物語。迷宮入りした家畜商人殺害事件の意外な真相。機中で知りあった奇妙なアルゼンチン人が唱える、作家ボルヘス非在説。すべてを語り終えた配達夫は、さて―。万華鏡のように交錯するエピソードに史実を織り込み、饒舌にシニカルに語られる現代の千夜一夜物語。現代ドイツ文学の異才、本邦初紹介。 

トゥルゼルンは作者の故郷ドイツ南部のバイエルン州アルゴイ地方にある架空の町。閉じることのない眼はふくろうの眼となり、すべての郵便を封を切らずして透視できる。が、それは決して語られることはない。そんな語られない24の寓話とも言える短篇集のような成り立ち。

最初はどことなくユーモアも交え、この小さな田舎町の郵便配達の日常が語られる。郵便物の中身を見透す眼もちょっと意地の悪い覗き程度にしか見えない。が、その眼が段々シニカルにグロテスクに、そして不気味になっていく。ケップフ を文学の道に呼んだのはあのギュンター・グラスだそうだが、『ブリキの太鼓』 の不気味さにも似ている。そして、私であった郵便配達員がずっと私なのかよくわからなくなってきて、時代も戦前、ナチス政権時代に飛んだり、郵便配達員の半生が語られたり、内容はというと哲学的になったり、と確かによくわからない。よくわからないが不気味さに惹かれて読めるんだな、これが。。。もっとさらりとも書けたんじゃないかと思うくらい、中身が濃い。小さな田舎町トゥルゼルンの郵便配達員の鞄の中の小さな小宇宙。鞄の奥から広がるのは、漆黒の闇か広大な世界か?
世界の果ては出発したのと同じ池だということになってしまう。じっさい、世界の果てといっても世界の始まりと同じことで、ようするに私たちの世界観のことなのです。

さて、気になるのは、”ボルヘスが存在しないことを証明する”という第22章。ボルヘスは彼と共作もあるビオイ=カサーレスのでっちあげで、ボルヘスはビオイ=カサーレスが仕立てた役者で、しゃべるセリフもすべてビオイ=カサーレスの脚本だった。その証拠はビオイ=カサーレスの「モレルの発明」を読めばたちどころに明らかになるだろう・・・・ 
いや、私も「モレルの発明」は読んだ。ビオイ=カサーレスの中では一番好きだし、一番凄いと思う。う~~ん、ならばもう一度さらりと見てみるか、と思ったのだが、それなりに順序だてて押し込んでいた私の本棚は、先日の引越しのドサクサで、もー収拾がつかないほど、ランダムな配置になっていて、しかも本棚の中で本は縦列駐車している。とても探し出せない。。。という残念な結果であった。
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