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マヤコフスキー事件

マヤコフスキーも碌に知らず、それどころかロシア文学はどちらかと云えば、喰わず嫌いなくせに、こんな本を読んでいいのか?作品も読まずして、彼の謎の死を描いた本から入っていいのか?いや、詩はとんと読まないんだった。。。
4309022359マヤコフスキー事件
小笠原 豊樹
河出書房新社 2013-11-19

by G-Tools

20世紀初頭のロシア未来派(ロシア・アヴァンギャルド)を代表するソ連の詩人。1930年、36歳の時に自殺したといわれてきたが、後年他殺説が浮上してきた。本書は、この他殺説を巡る小笠原豊樹氏のあくなき追及の一冊。スターリンの恐怖政治がソ連を覆っていた時代の中で生きていたマヤコフスキーだが、ロシア文学が喰わず嫌いの私は、このあたりは学校の世界史レベルの知識しかなく、改めてゾッとするようなスターリン時代の片鱗を本書で読むことになった。

証人の中でも中心となっているのは、彼の最後の恋人ヴェロニカ・ポロンスカヤ。マヤコフスキーの死について彼女が証言したり書いたりした文章が3つ紹介され、これが本書の三本柱。

1930年の供述調書は事件直後の彼女の証言
1938年の回想記は、事件から8年経ち、やや落ち着いてきた頃
1964年の原稿は、これがどんでん返し。時代はソ連の雪解け時で、秘密警察によって殺されたのではないかと仄めかしている。

マヤコフスキーの最後の1年が細かく綴られる。ポロンスカヤとの恋愛沙汰、自身の仕事の行き詰まり、当初それらが原因の自殺であるとされていたが、自殺当日に居合わせたとされていたポロンスカヤの証言は、事件後34年経った1964年に覆される。彼女は自殺現場に居合わせてはおらず、部屋を去るときにすれ違った謎の男(秘密警察?)がいたこと、そして事件直後のあまりに手際よい収束。

マヤコフスキーの人生についてはWikiなんかを覗いてもらうとして、女性遍歴や不安定な精神状態は、一人の人間の人生としては、何ともハチャメチャではあった。彼の詩もところどころに登場するが、詩を読まない私からすると、それは”吐き出している”とでもいうような、叫びに聞こえる。

自殺か他殺かというミステリー謎解きの面白さもさることながら、やはり圧巻は、小笠原豊樹の熱意というか執念なんだろう。すべてはそれといっていい。もちろん彼は他殺説を強く主張しているわけだが、緻密な証拠の積み上げによる論破というよりは、やはり執念に近い。そして小笠原氏も語っているように、死者を追悼することの意味を考えさせられる。小笠原氏のマヤコフスキーの死に対する悼みが本書であり、30年以上経ってもまだマヤコフスキーの死を対峙せざるを得なかったポロンスカヤへの思いがこの本なんだろう。
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