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移動祝祭日

この先もHemingwayを読むとは思えない。好きになれない理由はいくつでも挙げられるが、それとて喰わず嫌いの範疇をでることはないんだが、マッチョな冒険家で、ハンティングやフィッシングに代表されるスポーツマン、これだけでも私の好みからは外れる(笑) でもどうしてこれは買ってしまったのかというと、これがとんと思い出せないが、何かの本で『移動祝祭日』が登場したからで、この『移動祝祭日』というタイトルにぞっこん惚れてしまった。タイトル買いと云ってもいい。原題英語は「A Moveable Feast」。英語の語感は私には何とも云えないが、日本語の”移動祝祭日”はいい。

4102100156移動祝祭日 (新潮文庫)
アーネスト ヘミングウェイ 高見 浩
新潮社 2009-01-28

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「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」

ヘミングウェイは1921年から6年間、22歳から27歳という最も多感な時代をパリで送った。それを晩年綴ったのが本書。晩年というが、彼は61歳で猟銃自殺を遂げており、これは死後遺族によって出版された。3度離婚し4度結婚したヘミングウェイだが、このパリ時代は、最初の奥さん、エリザベス・ハドリー・リチャードソンとの貧しいけれど幸福な時代の物語。だがこのパリ時代に彼が別の女性を好きになり、ハドリーとは離婚した。

1920年代のパリは、芸術家の溜まり場だ。彼が関わった人たち、詩人エズラ・パウンド、作家ガートルード・スタイン、『ユリシーズ』で知られる作家ジェイムズ・ジョイス、その『ユリシーズ』を出版したシェイクスピア書店の店主シルヴィア・ビーチ、そしてあのスコット・フィッツジェラルド。実はヘミングウェイは私にとっては時折ひょこっと登場する作家だった。クンデラの「不滅」でチラッと、あのカルビーノが「なぜ古典を読むのか」でちょっと言及、キューバを舞台にした「低開発の記憶」に彼が住んでいた家が登場、アイザック・ディネーセンを「彼女こそノーベル文学賞を受賞すべきだった」とコメント、そして「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」がナチスから開放された時、まっさきにオデオン通りの書店に駆けつけたのは、ヘミングウェイだった。

ことさら貧乏暮らしを強調するが、喰うに困るほど貧乏だったとうわけでもなさそうだ。贅沢はできなかったがそれはむしろそういう暮らしを敢えてしていたようで、時には美味いものも食べ、酒も飲み、旅にも行っている。当時既に時代の寵児だったフィッツジェラルドのように豪奢な暮らしには興味がなく、そこは若かりし頃よりアウトドアな人だった模様。長篇を書きたいと望みながら、その準備として短篇を精力的に創作していた時代。『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』、『老人と海』のような大作しか知らなかったが、1920年代にはかなりの短篇を残している。

う~~ん、それでもやっぱりこの先もヘミングウェイを読むとは思えない(しついこい)。邦訳を読んで判断するのもどうかとは思うが、私にはあまりのスタイリストぶりがちょっと馴染めない。だが、今回知ったことだが、彼の人生はそこまで出来過ぎというわけでもなかったようだ。ヘミングウェイの家系は遺伝なのか、自殺者が多い。この本を書いていた頃は、既に自身の自殺の引き金となった鬱状態であったろうから、そんな精神状態で彼の脳裏に去来したのは、若かりし頃のパリと最初の妻、ハドリーの思い出だったということになる。戦場を駆け巡り、キューバの海で釣り三昧をし、アフリカで猛獣を追い、そして飛行機事故で瀕死の重傷を負う。いうことを利かなくなった身体も辛かったろうが、そんな肉体を抱えて生きなくてはならないことの方が彼には辛かったろうと思われる。彼のスタイリストぶりは、彼にとっての”こうあるべき生き様”を過剰に誇示しているように見えるんだが、これは私の勝手な想像なんだろうか??
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