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ユークリッジの商売道

ジーヴスシリーズにエムズワース卿シリーズだけでなく、ウッドハウスには隠れた(?)名シリーズがさらにある。ユークリッジとは何者かと云うと、スタンリイ・ファンショー・ユークリッジ (Stanley Featherstonehaugh Ukridge)なるこの彼の作品の中ではちょっと毛色の違うキャラ。黄色いマッキントッシュ(雨合羽ね)を国王のように纏い、堂々とした鼻には、ジンジャービールのワイヤーで固定した鼻眼鏡、パブリックスクールを放校になった後、世界中を巡っていたいう強者、否、その日のメシにも困るくらい貧乏ながら、スーパーポジティブな思考で、周囲の人間をトラブルに誘い込む。

4163277404ユークリッジの商売道 (P・G・ウッドハウス選集4)
P.G. ウッドハウス P.G. Wodehouse
文藝春秋 2008-12-15

by G-Tools

一応パブリックスクール出なので、今でも昔のご学友とは仲良し(?)で、三文文士やら外務省のエリート官僚、イカレ野郎、向かうところ敵なしのボクサー、お決まりの怖い伯母さんという内輪仲間で今日も明日も大暴れ。常に友を訪ねては、小銭をせしめ、メシをたかり、挙句に友のモーニング一式、シルクハットからスーツ、何なら靴下からシャツまで勝手に拝借。いつも一攫千金(地道に働く気は毛頭なく)を夢見て、アイディアだけは凄いのだが、詰めが甘いのか、運が悪いのか、最後は撃沈されてしまう。たまに入った小銭だって、宵越しの金は持たない主義らしく、その日の内にパッと使ってしまう。道ずれにつきあわされる三文文士のコーキー君も人がいいものだから、騙されるとわかっているのに、火中の栗拾いをする。パブリックスクールの同じ釜の飯を喰った仲間内の微笑ましくも、大爆笑の短篇たち。ジーヴスのように一分の隙のないという思考能力でもなく、バーティーのような生活に困らぬ人のいいのんびり屋でもなく、大ぼけエムズワース卿とも違い、とにかく行動あるのみのパワーと舌鋒はきっとウッドハウスが作り上げたキャラの中ではダントツのユニークさだろうと思う。ちまちましていない、とにかく豪放磊落、よくも悪くも大物怪人がユークリッジなのである。そんな放蕩息子をなんだかんだと、ほおっておけないのが、”心の友”たちなんだな。たぶん怪人ユークリッジは、金持ちになりたいというより、金持ちになる夢を見ているが好きで、一生夢を見ながら生きていきたいんだろう。

このちょっと異色のキャラを読んでみると、ウッドハウスのユーモア精神というより、その頭脳のキレの良さを実感する。一文一文、いや一語一語が完璧なまでに研ぎ澄まされている。実はこのユークリッジシリーズは大人気のジーヴスものより、文学的にはハイレベルなんじゃなかろうか?と私は思っている。この一冊で解った気になっていたWodehouseの凄さを再認識した次第。

邦訳ではこの怪人ユークリッジは自分を吾輩と呼ばせている。今時もその昔も、自分で自分のことを吾輩呼ばわるする若者はただ者じゃない。が、英語だったら単に ”I” なのだと思うと、日本語の人称というものは、キャラまで表現してしまうわけだ。 吾輩がこれほど似合うキャラは他にはあるまい・・・
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