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読書礼讃

本年最後は、マングェルの厚い本。過去、”本を読むこと”についていくつかの作品を提供してくれた読書の師匠のようなマングェル。今回もそうといえばそうなのだが、彼の半生を含む個人的な、ちょっと生々しさも感じる一冊だった。
4560083576読書礼讃
アルベルト マングェル 野中 邦子
白水社 2014-05-23

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今更云うのもなんだが、博覧強記を駆使した本の紹介ではない。人種問題、ジェンダー、テクノロジーと書物、翻訳と編集、今回初めて知ったが、彼はアルゼンチンのユダヤ系の家に生まれ、それが彼の人生にどう影響を与えたかまでを描いている。イスラエル大使も務め、一家でテルアビブで暮らした時代もある。その外交官だった父は軍事政権下で逮捕され、マングェルは大学生の時にアルゼンチンを離れ、ヨーロッパを放浪した。そしてその後政治弾圧による友人の死と、彼を本の道に導いてくれた恩師の裏切りを知った時の怒りと失望の混じる複雑な心境も描いている。彼はそもそも政治を語るタイプではなかったが、戦後の南米での独裁政権時代の中でどう考え、どう生きたか、それは彼の本と共に歩んだ人生の上にも当たり前だが影響を与えていた。「穏健なアナキスト」を自称するマングェルの半生は、ちょっと読んでいて辛いものがあった。

かと思えば、ロンドンのカーナビー・ストリートで自作のベルトを売っていたら、ミック・ジャガーの目に留まり、コンサートで使ってもらえたというエピソードも暴露しているし、ヒッピーのような出で立ちで大陸とイギリスを往復し、税関が歯磨きチューブまで検査したり、胡散臭い風貌からイギリス税関で止められ、自分は大使の息子であると云って切り抜けようとした冒険談も暴露してくれた。まあ、それは自慢の冒険談ではなく、官僚主義への彼なりの毒舌であるのだろうが・・・・

マングェルは読書の師匠ではあるが、そうそう!と相槌を軽く打てるようなそんな気さくな師匠ではないということも、今回初めて気付いた。彼の本に対する姿勢というのは、その真摯さといい信念といい、思わず我が身を振り返り、すいません・・・といってしまいそうになる。彼の肩書きは、作家でもなく翻訳家でも編集者でもなく、間違いなく『読書家』なのだ。まっすぐで常に前を向いている読書家なのだ。本は世界を変えることが出来ると、その師匠が云うなら、私ははい、そうです、と云うしかない。

彼がルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の愛読者だと云うのは、既知の事実なのだが、今回は章の始めにこのアリスの本からの抜粋を付している。一体何度読み返したのかわからないほど、つまり暗記するほど読んでいるのだろう。いずれ一度、オリジナルを読まねば(英語でね)と思いながら、決して児童書とは云えぬほど奥が深い『不思議の国のアリス』 は、もしや相当に難解な代物だったりして・・・ とグタグタしていても仕方ないので、Kindleの無料版をとりあえずダウンロードしてみた。とりあえず一歩前進したので、これにて本年終了。
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