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ヒトラー・マネー

以前、「ヒトラーの贋札」なる映画を見たときに知った、「ベルンハルト作戦」というナチスによる贋札作戦。本屋で何となく見つけてしまったこの本は、そのベルンハルト作戦のノンフィクション版。著者のローレンス・マルキンはアメリカの大ベテランのジャーナリスト。
4286161455【文庫】 ヒトラー・マネー (文芸社文庫 マ 1-1)
著者:ローレンス・マルキン 訳者:徳川 家広
文芸社 2015-10-02

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映画の方は、ドル札の贋札作りだったが、実際にはドル札はポンド偽造の後挑んだが、結局完成度も完璧ではなく、また結局ナチスは崩壊してしまったが、その前に製造していた大量のポンド札は、実際にイギリス経済に打撃を加えるほどのばら撒き大作戦だったようで、本書は主にそちらの方。また映画は、贋札作りに選抜されたユダヤ人の囚人を中心に展開されるが、この本はSS将校のベルンハルト・クルーガーが中心に描かれ、SS将校が腕利きの職人たち、しかし囚人を管理するというとんでもないプロジェクトXになっている。

贋造されたポンドは1億ウン千ポンド、当時流通していたポンドの約10%にあたるという。使用されたのは、イギリス植民地を中心とした本国以外の海外で、スパイへの報酬、武器調達、秘密工作の資金等々。映画を見てしまうと、この史上最大の贋札大作戦に対する驚きは今更ないけれど、SS将校が囚人、しかもナチの強制収容所の囚人を鼓舞しながらプロジェクトを遂行していく様子や、イングランド銀行の 'the Old Lady of Threadneedle Street' (縫い針通りの老婆ってことか)ぶりは面白いかもしれない。イングランド銀行の面子の守り方、つまり、我が大英帝国のスターリングポンドの贋札など絶対に認められないという面子と意地には苦笑する。ま、結局最後には、5ポンド札発行停止をしたらしいが。。

ベルンハルト・クルーガー指揮官もSS将校とはいえ、絶対服従のナチス内において、任務を遂行できなかった場合の恐怖感、またこの超一級のプロジェクトの機密保持にすり減らした神経たるや、相当な任務だったろうと思う。それでもやらざるを得なかったわけで、ナチス政権時代を考えると、巨大なお化けとしてのヒトラーのカリスマ性だけでなく、組織のピラミッドの下部にまで徹底した運営を行うとしても、恐怖感だけで人間を管理できず、やがて組織は崩壊するんだろうなあ・・・などと思った。

贋札作りというのは、個人レベルの偽札職人の話ではなく、その昔戦争を繰り返していた時代には、国家レベルで常に念頭にあった作戦らしい。実際に行うということとは全く別問題だが(それは、どうもイングランド銀行クラスのインテリに云わせると、道徳的に堕ちた作戦だったようだ)、大規模にやるとなるとお札というのは相当にがさばるもので、保管するにも、輸送するにも、空からばら撒くにも、なんなら燃やすにも、物理的規模がデカくなりすぎる。ナチス崩壊後、残った贋札や機材・機械は、オーストリアのトプリッツ湖の湖底深くに沈め、戦後それが発見されている。車でもいけないような僻地で、水深が非常に深いこの湖は、埋蔵金隠しには最適だと思われたらしい。たかが紙切れではないがどうにも始末に困る代物だ。その昔、金が絶対的価値を持っていたことを思うと、この札なる紙も、現代の電子マネーも、何だか無理やりな権威を背負わされたまがい物に思えてくる。

ローレンス・マルキンは自身がユダヤ系のアメリカ人で、ネットではこのフィクションへの公平性が疑われる云々の記述もある。まあ、ジャーナリストと云えども、人の子、客観的視点でクールに事実を見据えることなど、人間そうそうできるものでもないので、それはいい。むしろフィクションと云えども、著者のクセが出てしまう方が面白いし、アンタはそう見るのね・・・・と私が読めばいいわけで、話半分くらいで止めておけばいいことだ。私にとってはフィクションだろうと何だろうと、本である以上、面白くなくっちゃね!ということで、後半のブツブツ短い章割はちょっと飽きてしまった。映画「ヒトラーの贋札」で最後、贋札を全部カジノで使い果たしてしまうエンディングには申し訳ないが敵わない。
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