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愚者が出てくる、城寨が見える

光文社古典新訳文庫シリーズは時々、は?ってな作品を出してくれる。マンシェットって誰?
ジャン=パトリック・マンシェット(Jean-Patrick Manchette, 1942年12月19日 - 1995年6月3日 大学在学中から左翼の過激派に所属。五月革命を経験。1970年代から1980年代にかけてroman noir(暗黒小説)と呼ばれる犯罪小説を発表した。

4334751741愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)
ジャン=パトリック マンシェット Jean‐Patrick Manchette
光文社 2009-01-08

by G-Tools

精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる。

訳は中条省平氏。翻訳も著作も何冊か読んでいるが、この人の訳なら知らないものでも読んでみようと思う翻訳者の一人。あとがきで、どのようにマンシェットを知り、関わってきたかを語ってくれている。無理して(?!)褒めていないのが感じられて嬉しい。やっぱり翻訳する人が惚れた作品っていいのよね。思い出したのは、Daniel Pennacのムッシュ・マロセーヌシリーズ。そういえば、あの第一作目、『人喰い鬼のお愉しみ』も 中条省平氏だった。思い出した理由が、あのドライブ感。ロマン・ノワール(暗黒小説)という分野らしい。分野なんかどうでもいいのだが、ロマン・ノワール(暗黒小説)と云われると、昔のフランス映画、ジャン・ギャバンとかを思い出して、フランス版ギャング小説?と勘違いしてみたが、やっぱりそういう先入観は当たった試しがない。決して文芸小説というか純文学ではないんだけれど、これがどうして、どうして、一息にむさぼり読んでしまった。ロマン・ノワールだろうが、ギャング小説だろうが、これもいまや古典なのか・・・・

人が次から次へと死んでいく、暴力と狂気に満ちた小説であることは間違いないんだが、精神病院から金持ちの子守役になったヒロインのジュリー、胃痛を抱えた殺し屋、ジュリーと一緒に逃げる醒めたガキのペーテル、絶対変態だよなと思わせるジュリーをやとったアルトグ、でてくる奴らはみな狂ってる。描写は、妙なところが異常に細部にわたるくせに、人物の心情なんてまったくなしで、吐き捨てるような短い言葉の応酬ばかり。句読点だけで2-3ページに渡ってピリオドなし、なんて小説も世の中にはあり、そっちの方が何やら高尚なもののように評されるが、この短い文章で走り抜ける疾走感は、最高に爽快だ。

最後にジュリーの過去や、そもそも何で彼女を殺さなきゃならなかったのかとか、曖昧なまま終了してしまった。そういうの、普通最後には明らかにしてくれるでしょ、でもないのよね。「お前は死んでいる」 とペーテルが静かに告げて終了、まあ、それでいいのかもしれない。簡潔で殺伐とし、決して内面になんて深入りしない、でも狂人たちが皆哀しく、どこかホロリとさえしてしまう。でも、登場する輩はみなイカレてる。

やあ、久しぶりの一気読みで、気分がよいので、 別のJean‐Patrick Manchette をすぐに1冊ポチってしまった。
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