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緋文字

Nathaniel Hawthorne(1804 – 1864)。19世紀のアメリカを代表する作家の一人だ。同年代では、ポーやメルヴィル、ソローなんかがいるという文学の第一次(?)黄金期のひとりだ。本の最初は「税関」と題したプロローグがあるが、これは実際に税関で働いていたホーソーンが「緋文字」にたどり着くまでのいきさつ。実はここで最初躓き、一旦諦めたので、今回は2度目の挑戦だった。
4003230418完訳 緋文字 (岩波文庫)
N. ホーソーン Nathaniel Hawthorne
岩波書店 1992-12-16

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このブログの中のどこかにホーソーンならいるだろうと思ったが、どうもなくて驚いた。記憶では↓は読んでいる。
ウェイクフィールド / ウェイクフィールドの妻ウェイクフィールド / ウェイクフィールドの妻
N・ホーソーン E・ベルティ 柴田 元幸

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人面の大岩 (バベルの図書館 3)人面の大岩 (バベルの図書館 3)
ナサニエル・ホーソーン J.L.ボルヘス

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そして家の未読棚にこれがあったはず。
ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)
ホーソーン 坂下 昇

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「人面の大岩」 はバベルの図書館シリーズの中でも上位に喰い込む面白さだった。有名な「ウェイクフィールド」も短いながらこの気持ち悪さはなんなんだ、、と思った本。ちょっと不気味ででも面白い、19世紀半ばの今や古典といってもよい作品ばかりだが、なかなかどうして・・・

正直なところ、こんな本だったんだ・・・というのが実感。こんな本というのは、悪い意味ではないが、不気味さはあるものの、古典らしいしっかりとした骨組み。筋は単純にいえば、
17世紀のニューイングランド(主にボストン)のピューリタン社会を舞台に、姦通の罪を犯した後に出産し、その父親の名を明かすことを拒み、悔恨と尊厳の内に新しい人生を打ち建てようと努力する女性ヘスター・プリン(英語版)の物語 (Wiki)

ヘスター・プリンは多くを語らないのだが、強くたくましい女性、対する姦通の相手の牧師は気弱なへなちょこで、医者になりすまして登場する寝取られ亭主は復讐に燃える悪医者。この3人の罪とこの時代のピューリタン社会が絡む。そして不義の子パールは、天真爛漫な天使のような美しい子供のようでいて、端々に見える悪魔性が怖い。ヘスター・プリンは最後まで父親の名を明かさないが、父親が誰なのかは途中にわかるので、謎解き本ではない。やはり面白いのはこの時代のピューリタン社会の罪や道徳、社会通念とその矛盾の方だった。

緋文字の赤とパールの白、宗教と科学、善と悪、こういった対比がたくさん出てくるが、その境目は絶対的ではなく、それは当時も現代も変わらないのだろうが、緋文字を胸につけ罪を背負いながら一生を清貧の中でつつましく暮らしたヘスター・プリンは一時の過ちを悔いる健気な女性というより、対比の矛盾を象徴させるような存在だ。社会的には罰を受けなかったが、自分が父親であることを隠しとおした牧師はそれに耐えられずに死んだも同然で、事実を知って牧師を追い詰める悪医者の亭主も最後は死ぬ。罪を背負いながらも浄化していくかのようなヘスター・プリンに対して、男二人の情けなさはなんだ?そして、天使か悪魔か?という娘パールは行方がわからなくなり、でも人生を全うしたという最後。

この「緋文字」の厄介な(笑)ところは、様々な古典的なテーマを盛り込んでいるかのように見えても、それはどれも押し付けられてもいないし、教科書的な結論もないし、作者の意図が本当にはどこにあったのかもわからなく、読者に委ねられているように思えるところ。こういう本の方が好きであることは間違いないが、だからこそ、う---んとなってしまい、まるで踏み絵を迫られているような気持になる。
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