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果てしなき饗宴 フローベルと『ボヴァリー夫人』

Amazonで網を張っていたがずっと価格が高止まりで手を出していなかった1冊。ようやく妥協して購入。邪道だとは思うが、『ボヴァリー夫人』は読んでいない、いやフローベルを読んだことはない。リョサによる文学論、彼が愛してやまないフローベルの『ボヴァリー夫人』論。

果てしなき饗宴
4480013199果てしなき饗宴―フロベールと『ボヴァリー夫人』 (筑摩叢書)
マリオ バルガス・リョサ 工藤 庸子
筑摩書房 1988-03

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筑摩書房のサイトに目次があった。
第1部 報われることなき情熱
第2部 ペンの人間(付加された要素
結合と置換
『ボヴァリー夫人』における四つの時間
語り手の変貌)
第3部 最初の現代小説(アンチ・ヒーローの誕生
小説は形式である
内的独白
客観性の技法―行動主義の小説
ベルトルト・ブレヒトとフロベール、あるいはひとつのパラドックス
人生への否定的参加としての文学)


愛の告白のような第一部、私には苦手だった分析の第二部、現代文学の観点からみた位置付の第三部。この本を読んだからといって、即座に『ボヴァリー夫人』を読みたくはならない(笑)が、登場人物特に、ヒロインのエマと薬剤師のオメーだけは、どんな登場人物なのかと妄想が膨らんでしまう。

評論的な文章を読みこなせない私には第二部はちょっとつらかったが、それ以外は時折へぇーーとかほぉーーとか思えるので、さほど難解な本でもない(そこはリョサだから・・・)。ボヴァリー夫人が書かれたのは19世紀の中頃。この19世紀中頃という時代をよく理解している方には、フローベルがどれだけ革新的な人物だったのかわかるのだろうが、私のような文学史にとんと疎いものには、まずそこがへぇーーだった。絵画でもそうだと思うが、中世の時代、画家は宮廷や教会など権力者お抱えの公務員みたいなもので、描くものといったら、所謂宗教画、肖像画(権勢を誇示するような)ばっかりで、庶民の何でもない暮らしなんぞ、絵画の対象になるはずもなかった。これは文学の世界でも似たり寄ったりだったのだな。現代から見たら、ボヴァリー夫人の粗筋は、普通というか、ソープオペラなんだが、かっとんだ女性、キリスト教的枠組みから外れた女性というだけで眉を顰められる時代、エマはとんでもなく想像力豊かな女性だった。なんでもない日常、普通のことを小説にするというのは画期的な事件で、リョサ曰く、フローベルはその先駆者であった。

またフィクションにおけるリアリティーの考え方もなるほど、である。フィクションというのはリアルな世界ではないし、フィクションの世界で起こる事象もリアルでないかもしれない。幻想小説だのマジックリアリズムで描かれる事象がリアルかと云われると、それは違うのだろうが、フィクションと我々の現実を繋ぐものを付加させることで、そこにはリアリティーが生まれる(あーこれでいいんだろうか?)付加させるために、時間、空間、文体を用いた手法があるわけだ。フィクションがリアリティーを持つことで、そのフィクションに人を動かす説得力が生まれる。それがフィクションの力、文学の力なんだろう。

リョサとフローベルが似ているなどという人はあまりいないだろうが、小説の根っこのところは案外同じなのかもしれない。違ってくるのは根の先から派生したもの、表現のされ方が違うとでもいうのか・・・ この例えでよいのか不安だが、昔バルセロナを訪れたとき、ミロ美術館に行った。先に訪れいた友達の感想は、”ミロって絵が上手かったんだと思った”。そして私もそう思った。当たり前だが、フワフワとしたケムンパスのようなものが浮遊してる抽象画だけを見ていると気づかないが、そこにたどり着くまでには、ミロだって基礎のデッサンだの構成だのといった絵画理論を経て自らの表現方法を編み出している。私たちが眺めるのは、最後に表現されたもの、最後に行き着いた彼独自の有名な作品ばかりだが、そこに至る過程から眺めてくと、ミロって絵が上手いんだと、友と同じ感想に至った。

とはいえ、評論は苦手だな。今の時代に読む『ボヴァリー夫人』はどんなもなのだろう?名作はいつまでたっても現代に働きかける。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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