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ズボンをはいたロバ

多田 智満子さん訳なので、買ってみた。 Henri Boscoは初めて聞く名前だが、南仏で暮らした人だそう。「文学のおくりもの」シリーズに多田智満子さんが登場するのもちょっと意外だったが、児童文学風な体裁に多田智満子さんが登場するのはもっと意外だ。

ズボンをはいたロバ
B000J8TZKYズボンをはいたロバ (1977年) (文学のおくりもの〈21〉)
アンリ・ボスコ 多田 智満子
晶文社 1977-06

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南フランスの自然と動物、少年とその家族、確かに児童文学の枠組みで、メルヘンのような神秘性もあり、何やら可笑しなズボンをはいたロバも登場するが、あとがきにもあるように、これは楽園を作ろうとして結局すべて崩壊してしまった失楽園の物語だった。児童文学として小学生でも中学生でも読めるだろうが、エンディングについて ”どうしてxxxxxx?” と聞かれても、きっと答えられない。大人になっていく少年と少女やそのロバに夢中になって子供の頃読み、大人になってあらためて読んだら、全然違う印象を持つタイプの本だろうと思う。

それにしても、何と匂いと香りの充満した文章なのだろう。花の香り、土や動物たちの匂い、風や季節や木々などすべてが匂い立っている。そしてアンリ・ボスコ自身が暮らしていた南仏プロバンス地方のそこは、カトリック地域ならではの祝祭日が多々描かれるが、それは厳格なカトリックというより、日本でいう神道を基とする風習や習慣とよく似ている気がする。暮らしに根付いた日常に組み込まれた、ちょっとした晴れやかな日のようだ。

楽園の主である不思議な老人シプリアンの正体を知るのは、村の司祭のシシャンブル神父だけだが、彼の過去を知る神父は「楽園というものはね、天国にしかないものだよ」と少年コンスタンタンに説く。それをどうとらえたらよいのか私もわからない。シプリアンの楽園建設は夢物語ではなく、そこにあったのはむしろ彼の狂気だったわけで、ただ一つ思うのは、大地に根を張って生きることを示唆した言葉でもあるのだということ。そしてそれこそが、少年が大人になっていくということなのかも知れない。
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