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女ねずみ

「ブリキの太鼓」で、初めてギュンターグラスに出会い、度肝を抜かれた。そして2冊目。
433603589X女ねずみ (文学の冒険)
ギュンター・グラス 高本 研一
国書刊行会 1994-12

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それにしても、ギュンターグラスの作品ってすべてこんなに濃厚なのか?400ページに見えて、小さな文字で2段組はGW期間中にだらけていたら、随分と時間がかかってしまった。そしてこんなに時間をかけていながら白旗だ。(白旗ね)

1986年に執筆されたこの『女ねずみ』は、語り手の夢に現れる女ねずみが、核戦争による人類滅亡後を語る。とそれだけなら、複雑にはならなかったのだろうが、ここに先の『ブリキの太鼓』のオスカルが登場し、死にかけた森をテーマにビデオを作成する。とそこにまたグリム童話の主人公たちが出たり入ったりする。オスカルのおばあちゃんの107回目の誕生日にオスカルは祖国ポーランドに向かい、汚染のすすむバルト海調査に乗り出した女性たちがクラゲ調査をし、実話でもあるマルスカートの贋作裁判までモチーフに使われる。ハーメルンのネズミとりの伝説もあった。そして人類滅亡後に現れたねずみ人間、否、人間ねずみ等々・・・・ う~~~ん、全篇に渡って私はずっと迷子だった。

饒舌なことといったら、『ブリキの太鼓』並みで、ギュンター・グラスという人は、きっとこういう作風なのだろうが、この力量には圧倒される。こんな収拾のつかないストーリーながら映像化されているらしく(日本未公開)、できれば今回は本ではなくそっちで済ませたい気持ちで一杯だ。

昨年ギュンター・グラス が死去したとき、『ブリキの太鼓』と、ナチ党の武装親衛隊に所属していたことを告白した『玉ねぎの皮をむきながら』の2点くらいしかどこも取り上げていない。出版される作品はいつも物議を醸しだし、政治的発言も多く、そしてノーベル文学賞を受賞したと思ったら、元ナチ党員でバッシングを受け、と彼の人生はとにかく激しい。激しいのだが、饒舌な作品たちは、思いっきりロマン主義的だ。私が一番困惑するのは、このギャップなのかもしれない。そしてこんなことまで語っている。
人間は、いろんなことができたが、ただ寛容にだけはなれなかった。今度こそ、われわれは、お互いのことを考え、そのうえ平和を好み、いいかい、優しく愛しあうつもりだ。もともとそうであったようにね。
寛容さ。人類の存亡は我々の寛容さにかかっているのか?日本でいえば軍国少年であった自分が、戦後その価値観をひっくり返された。本作が出版された1986年は東西冷戦終盤の時代だ。そして彼は似非の平和を享受する人類を批判する。マルスカートの贋作裁判をモチーフに使用していることと、この似非平和は私の中ではつながってしまったのだな。

ということで、こんな風に本題から外れたところについつい惹き付けられてしまうもので、今回はマルスカートの贋作裁判。ということで、関連する本を一冊ポチってみた。
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