GWのはざ間の午後、千駄木の古本カフェに里帰りしてみた。Twitterは見ているからよもや閉店!のような驚きはないことは知っていいたが、何だかあんまり変わってないなァ・・・と、棚に並ぶ本を眺めながら、最後に訪れた去年の7月もそこに鎮座していた本に久しぶりに対面してみた。久しぶりなので物色後、2冊お求めになった。これはその内の1冊。莫言がノーベル文学賞を受賞した時(2012年)、流行りモノには手を出さぬポリシー故、遠目で眺めて終わっていたが、まあ、そろそろよかろうと、初めての莫言さん、そして
「愉楽」以来の中国作品。
下記の短篇を収載。
竜巻/涸れた河/洪水/猟銃/白い犬とブランコ/
蠅と歯/戦争の記憶断片/奇遇/愛情/夜の漁/奇人と女郎/
秘剣/豚肉売りの娘/初恋文化大革命を中心に、飢餓と貧困の農村を描いた短篇集。中国のガルシア・マルケスと云われているそうで、なるほど、そんな雰囲気もあるが、中国のマジックリアリズムはもっとエグい。このグロテスクさ、非情さ、社会の不条理や不公平さってアジアのそれなんじゃないかな。日本とはもちろん違う環境ではあるが、どこか共感(?)できる感覚がある。匂い? 臭い?がわかるとでもいうのか・・・ 「愉楽」の閻 連科は彼の後輩になるが、閻 連科ほどのスキャンダラスなものはなく、そちらを先に読んでしまうと、むしろ優等生的で、中国人初のノーベル文学賞作家が、体制寄りと一部批判を受けたのも、真偽のほどはさておき、わからなくもない。「飢餓と孤独がわが創作の財産である」ということだが、そのあたりがちょっと優等生的なのかもしれない。いや、飢餓と孤独は身に染みて経験したものだけがわかることなのだろう。どう深読みするかだとは思うが、私のようにさしたる基本知識もないまま、物語としてこの本を読むと、それは文革の批判よりは、その自分が味わった貧しさとそれを招いた環境なのであって、中国の農民作家の代表たる自身の立場を明確にしているだけかなと思える。声高に体制批判をし、国を飛び出し戦うのもひとつ、中にとどまったまま、体制を利用しながら、戦うのもそれもあり。彼のスタンスはあくまで農民のそこにある。
偶然だが、昨日某新聞で、最近中国では文化大革命批判に蓋をする動きがあると書いている。
『文革50年、語るべからず 中国当局、研究者に「警告」』
50年が経た今、当時を語れる人も段々少なくなるのだろうな。
それにしても、中国の作家は2冊目だけど、なかなか面白い。
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