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薔薇とハナムグリ

アルベルト・モラヴィアの本はそんなに読んだわけではない。過去には「金曜日の別荘」なんて読んだ気がするが、その印象が強くて、次に読んだ「眠くて死にそうな勇敢な消防士」の存在を忘れていた。「金曜日の別荘」だの「軽蔑」だのちょっと濃厚なイメージが先行していたから、この”風刺短篇集”を読んで驚くと同時にちょっと嬉しくもなった。「眠くて死にそうな勇敢な消防士」系統の短篇集と云えばよいのか?光文社のサイトにいったら、こんな紹介をされていた。
部屋に木は生えるわ、ワニをはおった婦人はしゃしゃり出るわ、ヘンな匂いのする病気がはびこり、タコにも言い分があるらしいし、制服?はシマモヨウが流行る気配、そして披露宴からは誰もいなくなった......。
ぶっとんだ悪夢が、あなたを根底から笑わせる。でも、これは本当に夢か?


4334753108薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集 (光文社古典新訳文庫)
モラヴィア 関口 英子
光文社 2015-05-12

by G-Tools

1 部屋に生えた木
2 怠け者の夢
3 薔薇とハナムグリ
4 パパーロ
5 清麗閣
6 夢に生きる島
7 ワニ
8 疫病
9 いまわのきわ
10 ショーウィンドウのなかの幸せ
11 二つの宝
12 蛸の言い分
13 春物ラインナップ
14 月の〝特派員〟による初の地球からのリポート
15 記念碑

実にさらさらと読める寓話集。作品のほとんどはファシズム体制下で書かれたものだということで、ファシズム・差別・貧富の差などに対する風刺はかなりわかりやすい。その表現手段としてシュルレアリスムの手法が使われているが、滑稽で奇想天外な発想はシュルレアリスムではあるが、不思議とリアリティーを感じさせる。夢の話も多いが、これは夢と云いながら、決して夢物語ではなく、現実社会の現実だ。クールとは正反対の何だかちょっと熱いものも感じられ、そのあたりがリアリティーの源泉か?解りやす過ぎて、「春物ラインナップ」のような体制批判をしているものは辛くなる。15篇どれも楽しめるが、超スポットでお気に入りを挙げれば、「パパーロ」でパパーロによって足の中身が吸われて透明化するというシーンが一番好きだ。が総じてこれら短篇集が面白いのは、そこまで云うか?そこまでやるか?そこまでいくか?の妙なんだなあ。「部屋に生えた木」も途中で気づけよ、、、だし、「ワニ」も最後の最後までワニファッションを憧憬の眼で見る女(気づけよ!)。

関口英子さんの翻訳は、 ロダーリ 、 ブッツァーティ、イタロ・カルヴィーノなんかで過去幾度か遭遇しているが、こなれた表現が私はとても好きだ。

初めて知ったが、モラヴィアの作品の邦訳というのは実に多く、カルヴィーノを凌ぐらしい。まさしく20世紀を生き抜いた(1907-1990)イタリア文学界の巨匠。映画化された作品も多い(知らなかったがそーなんだ、という映画ばかりだった)。エロティシズムを描かせても上手いし、可笑しくてでも辛辣な風刺を書かせても上手い。エンタテイメント界でも人気があるのはとてもわかる。

最後に、”ハナムグリ” って何だか知らなかった私。これは虫なんだが、どんな虫かというと、まあコガネムシ、カナブンの様な虫だった。そう思って「薔薇とハナムグリ」を読むと、情景がさらにリアルになる。
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