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ケツァル鳥の館

この変形サイズのちょっとかわいい本は、東京在住中に通っていたブックカフェで既に知っていたが、何となく買わずじまいだった。会社近くの古本屋で再会した時に、ああ、運命なのだね・・・と思い、買ってしまった(鳥に特段の興味もないくせに)。表紙の絵、それから作中の絵も山本容子さん。作者のビルヒリオ・ロドリゲス マカルはグアテマラで「ジャングルの詩人」と呼ばれた人だそう。1916年生まれの作者が23歳のときに上梓されたのがこの本。グアテマラの中等課程の教材にもなり、70年も読み継がれているということだ。

4163205101ケツァル鳥の館
ビルヒリオ・ロドリゲス マカル Virgilio Rodr´iguez Macal
文藝春秋 2001-11

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登場するのは、ハナグマ、アルマジロ、コヨーテ、イグアナ、鹿、サンゴ蛇、テンジクネズミ、マナティ、そしてグアテマラの国鳥・ケツァル等々。私が知っている動物もいれば、初めて聞く名前もある。が、挿絵もあるし、どんな動物なのかは、読んでいけば大体わかるようになっていた。

動物たちは、耳慣れないカクチケル族の言葉で登場する。擬人化された動物が織りなすジャングルを舞台にした童話なのかと訝りながら読み進めるとちょっ違う。学校教材になるくらいなので、極めて読みやすいが、夢のファンタジー物語ではなく、自然の生と死が生々しく描かれる。残酷かと云われると、少し違う。また擬人化も変に人間が編集していないので、嫌らしい教訓臭さは全くない。ドキュメンタリーのようだ。詩情豊かに描かれるジャングルは「緑の館」と呼ばれる。今までラテンアメリカの文学で登場した、熱と湿気が充満した鬱蒼としたジャングルとは少し違い、湿度は低め(笑)だ。そして、動物故なのか、私の視点も動物に併せて地べたから木の上、川の中と自然に動かされていく。ここには人間中心ではない、人間視点とは違う世界がある。

動物たちは喰っていくために、餌となる動物を殺し、そして餌にならぬよう身を守る。だがそうしていても逃げ切れない時には殺される。非情というより、極めて率直だから、悲しい話しにはなっていない。そしてジャングルの王のような存在の動物は、二本足歩行する奇妙な生き物に殺される。その二本足動物は銃を持ち、それに従う犬を連れている。最後の最後まで結局は人間に殺され、人間がピラミッドの頂点に立ってしまうのか?と思いきや、最後になってこの本の意思が見えてくる。二本足の奇妙な動物は、他の動物を殺すが、その肉は喰わない。森の世界の弱肉強食が神の摂理で、自然の掟ならば、人間だけがその掟に逆らっている。

最後にケツァルという鳥の話。
体長は35cm程度だがオスは長い飾り羽をもち、これを含めると全長は90~120cmにもなる。頭から背にかけて光沢のある濃緑色をしており、腹部が鮮やかな赤色である。
グアテマラの国鳥であり、通貨単位でもある。ながーーい飾り羽は見事だが、古代アステカではケツァールは農耕神ケツァルコアトルの使いであるといわれ、その羽を身に着けることができるのは、聖職者と王だけだったらしい。希少動物になっており、本物はどのくらいグアテマラで見ることができるのかはわからないが、きっとグアテマラの子供たちでも知っている鳥なんだろうな。ということで、写真を二枚。確かに、これが自然が作りたもうた造形物なのだからまさに驚異の美しさ。捕らえられ、自由を奪われると死んでしまうとも云われ、自由の象徴でもある鳥。
Quetzal2 Quetzal1
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