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山椒魚戦争

買ってから知ったのだけれど、有名なチャペックの「山椒魚戦争」、小学館のこのシリーズは完訳版ではなくて、簡略版ということだ。云ってよ、というか表示してよ。。。。
でも話はとても面白かったし、このユーモアと風刺、飄々とした語り口などは、いかにもチャペックだ。

409251008X山椒魚戦争 (地球人ライブラリー)
カレル チャペック Karel Capek
小学館 1994-10

by G-Tools

南洋の島で発見された山椒魚。教えれば人間の言葉も獲得し、文字も読めるようになる知的動物であることがわかる。最初に目をつけたのは、そこを航海中の船長で、天然真珠を取ってきてもらう代わりに、彼らが必要な器具や武器を渡すという原始的な取引だったが、あれよあれよという間に、巨大組織により、人間のための労働力として利用され始める。極めて生存力も高く、餌代もさして必要ない山椒魚は、養殖により莫大な数に増え、文字通り奴隷として売買までされるようになる。利用しているようで徐々に山椒魚に依存していく人間たちは、やがて反乱を起こした山椒魚にしっぺ返しを食らうことになる。

山椒魚の労働力を利用して、海をどんどん埋め立てていく人間たち。山椒魚が反旗を翻したときに要求したのが、各地の大陸を海にするという逆襲が可笑しい。あれよあれよという間に、かつて陸地であった山間部であった場所に、海から続く河になり、スイスの山にまで山椒魚が現れる。ロンドン動物園に捕獲された山椒魚が、おうむのように人間の言葉を繰り返すようになり、それに気付いた飼育係との会話も笑ってしまう。山椒魚を嫌悪し人間界から廃絶しようという論調がある一方、山椒魚の権利を主張し、教育を施す者が現われたりする(実際に、山椒魚が学ぶ学校ができたりする)。山椒魚の反撃が始まったものの、各国は自国の保身に終始し、意見の総意も取れないあたり、現代と変わらない滑稽さ。

さて、愚かな人類に報復したかに見えた山椒魚だが、そこから自爆の道をたどる。ナチス批判の書として禁書となったこの本だが、ナチスをなぞったのは、山椒魚帝国の方で、その帝国の総統がヒトラーを明らかに想定させる。山椒魚内にも民族的な分化が生じ、人類の愚を繰り返す可能性が綴られて本は閉じられる。人類は山椒魚との闘いに際しても、自国権益ばかりを求め一体化できないだけでなく、自国の利益のために山椒魚に武器等を供給し続ける。人類に奴隷のように利用されていた山椒魚に同情していた前半とは打って変わって、後半はその不気味な山椒魚帝国にぞっとする。

サイエンスフィクションの古典ながら、今読んでもそのユニークな視点は凄い。愚かな人間たちを可笑しく描いただけでなく、海を埋め立てる人類と、陸地を水没させる山椒魚の生態系破壊までを既に1930年代に指摘していたチャペック。
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