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誰がパロミノ・モレーロを殺したか

間が空いてしまったので(古本価格が思ったほど下がらなかったので)リトゥーマ三部作であることをすっかり忘れて、これもリトゥーマものであると、読み始めて気づいた。
「緑の家」
「アンデスのリトゥーマ」
「緑の家」の後に書かれた第二作目が、この「誰がパロミノ・モレーロを殺したか 」で、リョサには珍しく200ページ足らずの短い本。
4773892110誰がパロミノ・モレーロを殺したか (ラテンアメリカ文学選集 6)
マリオ バルガス・リョサ Mario Vargas Llosa
現代企画室 1992-08

by G-Tools

長篇大作のイメージが強いリョサが三部作の隙間で軽い(本の重さが)本をさらりと書いたのかと思って読んでみたら、ページ数の割には読んだ感があった。リョサの好きなところは、壮大な作品であってもプロットがわかり易くで迷子にならず、兎に角ストーリーはしっかり追えること、それから歳を経るに従い、壮大な作品であっても、ユーモアを交えてくれるところ。ユーモアは裏を返せば、笑いの裏にある哀しい現実であったりするが、笑い飛ばすしかない現実であることも含め、流石だ。

「若い男がイナゴマメの老木に吊るされ、同時に串刺しにされていた。」
という、むごたらしい死体が発見されたことから始まるこの物語は、その犯人探しをメインストリームにした推理/探偵ものの様相だ。事件を追うのは、我らがリトゥーマ警官と彼の上司であるシルバ警部補。殺されたのは、空軍で志願兵として勤務していたパロミノ・モレーロ。二人が事情を聴きに、空軍のマンドゥロー大佐の元を訪ねると、そこに何やら事件の核心に迫る匂いがある。

マンドゥロー大佐の娘に恋い焦がれたパロミノ・モレーロが、結局娘の恋人に殺されたというのがオチではあるが、犯人が誰かといより、白人(=娘)と混血(=パロミノ・モレーロ)の交際など、絶対に許せないという人種差別は、事件を握りつぶすという上層部の判断で幕を閉じる。シルバ警部補とリトゥーマは最後に左遷され、街は何もなかったかのような公式発表のウソなどお見通し。そしてこの200ページ足らずの中に、太った年増の料理女にぞっこん惚れこんでいるシルバ警部補と、彼を信頼するちょっと間抜けなリトゥーマとの会話が、見事に色を添えている。正直言えば、この年増女をめぐる物語の方が、楽しいくらいだ。抜群に人を見抜く力のあるシルバ警部補は、ハンサムで女にもてるはずなのに、何をどうしてこんな太った年増女に入れあげるのか、リトゥーマならずとも、不思議なのだが、警部補が ”デブと肉付きのいい女の違い” を得々と語るあたりはあっぱれだ。どうにも憎めないシルバ警部補。そしてこの何ともいい男であるシルバ警部補が惚れに惚れたドニャ・アドリアナがピカイチのラテン女で爽快ときている。デブではなく、肉付きがいい、と女をあーでもない、こーでもない、とついつい想像をめぐらしてしまう。

どうにもならない現実を笑い飛ばした最後に残るのは、やはりやりきりないペルーの現実で、笑った後には哀しさが残る。さすがです。
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