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ハードライフ

先週の金曜日にビッグサイトで開催されていた東京国際ブックフェアに行ってきた。年に一度のお楽しみってやつになってきた。ほぼ新刊という最近出版された本が2割引きくらいで購入できる。古本ではなく、新刊というのがミソで、事前調査も怠らない。死ぬまでには読もうというような、普段ついつい後回しにしてしまう分厚い本も、えいヤ!と購入してしまうのがこのブックフェア。それとは別に、国書刊行会で必ずチェックするのが、『文学の冒険』シリーズ。私にとってガイブンはここから始まったといっていいシリーズで、なんだかんだとかなりの品揃えになったが(喰わず嫌いはあるけれど)、絶版も多いし異常な高値になっていて入手できていないものもあるので、このフェアでチェックする。それがなくとも国書刊行会様のブースには当然行くわけだが、本つながりの知り合いの方もここにはおり、ご挨拶するのもお決まりになってきた。

って、ことで今年も一冊見つけたきた。
4336035873ハードライフ (文学の冒険シリーズ)
フラン オブライエン Flann O'Brien
国書刊行会 2005-02

by G-Tools
フラン・オブライエンといえば、『第三の警官』だが、白水Uブックスで復活するまでは私には入手できないほどの希少本だった。その時に買ってしまった英語版は今でも未読棚に飾られている。その後本の内容を知るにつけ、どう考えても私が英語で読めるレベルであるとは思えず、ほったらかし。そしてもう一冊『スウィム・トゥー・バーズにて』は素直に白水Uブックス版を購入し、こちらもほったらかし。更に更に『ドーキー古文書』は、集英社ギャラリー「世界の文学」<5>の中にしか見つけられず、持つのも億劫になるほど厚くてでかい世界文学全集なので、ほったらかし。真剣に探した挙句、そこで満足してほったらかしにしてしまう作家になってしまったフランオブライエン。そして4冊目『ハードライフ』だが、薄い本だったこともあり、やっと一線を超えることができた。

その初フランオブライエンを読んだ感想は、普通に読めるじゃん・・・ でもなんか変・・・・
20世紀初頭のアイルランドのダブリン、両親を早くに亡くして孤児となったメイナスとフィンバーの兄弟は、義理の伯父コロッピー氏に引き取られ、その家で暮らすことになった。友人の神父と議論にふけり、何やら重要なプロジェクトを画策中らしい変り者、コロッピー氏の独自の教育方針の下で二人は育てられるが、やがて兄メイナスは綱渡り術の通信講座というイカサマ商売を考案、怪しげな教本の出版販売や競馬のノミ行為など次々に事業を拡大し、ロンドンへと出て行った。その後、コロッピー氏が重い関節炎に悩んでいることを聞いたメイナスは、奇跡的特効薬“豊満重水”を贈って服用をすすめるが、この薬が思わぬ事態を引き起こすことに…。奇想小説『第三の警官』で知られるアイルランド文学の異才フラン・オブライエンの「真面目なファルス」小説。

フランオブライエンはアイルランドの作家だが、どうもジェイムス・ジョイスとセットになってインプットされていて奇想奇天烈なイメージばかりが先行してしまうが、あからさまな奇天烈さではなく、この本に限っては地味に奇天烈。語りは孤児の弟の方で、つまらない学校をとっとと飛び出し、胡散臭い商売で一旗揚げようとしている兄を傍観者のように眺めている生真面目な奴かと思いきや、ジメジメっとした暗さがある。一方兄はやることは胡散臭いが、ある種健全な人間だ。引き取られた先の義理の伯父さんコロッピーは毎日毎日神父と宗教談義を繰り返し、堅物であるかと思いきや意外と過激な伯父さんだったりするのだが、最後まで謎のあるプロジェクトに取り組んでいる(だから、何‼と聞きたくなる)。リュウマチにかかった伯父さんのために兄が送った奇跡的特効薬“豊満重水”も、だから何それ?なんだな。そしてクライマックスはこの伯父さんと神父と兄が、ローマに出向き時の教皇に謁見するというものだが、なんで会えるのよ!という突っ込みを入れる間もなく、その謁見の内容はチンプンカンプンである。なぜチンプンカンプンかというと、肝心なところは、イタリア語だかラテン語だかで教皇が発言した内容だけがあり、当の伯父さんの発言は端折られている。伯父さんの爆弾発言が何だかわからぬまま、怒り狂った教皇の言葉だけが通訳を介して列挙されるという意地悪さ。だから何なのよ!再びである。

落胆した伯父さんは、謁見後おんぼろの木製階段が崩壊するという事故で、あえなくこの世を去る。伯父さんの極秘プロジェクトはどうもご婦人の排尿絡みの何かだったらしいとここでようやく、でもぼんやりとわかる。遺産手続きのためにアイルランドに戻った兄と弟がパブで飲んで別れるところでエンディングとなるが、但し!最後はこの弟がトイレに駆け込み;
ぼくの内部のすべてがふつふつと沸き立ち、荒れ狂う嘔吐の奔流となって溢れ出した。
これにて終了。「排尿と嘔吐」の物語。”荒れ狂う嘔吐の奔流”に気を取られていたが、今気づくと問題は ”ぼくの内部のすべてがふつふつと沸き立ち”の方なのかも知れないと思えてきた。兄と違いダブリンに留まった弟がアイルランドの影を溜め込み、最後に吐き出したような。。。

フランオブライエンの作品に中では、評価が分かれるこの『ハードライフ』だが、潜在能力満載だった。で、次は『スウィム・トゥー・バーズにて』だな。
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